福田和也 「第二次世界大戦とは何だったのか? 戦争の世紀とその指導者たち」

   筑摩書房 2003年3月25日初版


 フランス革命以来のヨーロッパ近代史は第一次世界大戦で完全に切断された。それにくらべれば第二次世界大戦のもつ意味は小さい。日本はほぼ第一次世界大戦に参加しなかった。そのことが日本に決定的な影響をあたえた。日本は第二次世界大戦に受身ではなく主体としてかかわった。これは日本が世界と主体的にかかわった最初のできごとなのである。
 としたあと、福田は戦争の指導者たちを一筆書きで描いてゆく。あっという間にドイツに降伏してしまい存在しなくなったフランスを、「自由フランス」という幻の国家として自身に体現させたド・ゴール。その遺書。巨万の富をもつ名家に生まれた生まれながらの大統領であるF・ルーズベルト。そのアパシーにもとづく戯れの政治。アメリカ人を母にもつというチャーチルのもつ出自の意味。ヒットラーを天才的悪魔的な政治家であるとすることによって多くのひとが自分の失敗を免罪しようとしているのではないかという見方。ヒトラーは敵を殺したがスターリンは仲間を殺した、それによる怯えにもとづく統治など、あまりに文学的な見方ではないかという印象はあるが、それぞれに印象的な像が描かれていく。
 福田氏は次から次へという感じで本を出すが、一体、いつ勉強する時間があるのだろうかと不思議である。作家の値打ちなんて本を書くためだけでも何百冊かの本を読むいつ様があるのだろうに・・・。本書を読んでA・J・P・テイラーという人の本も読んでみたくなった。