今日入手した本

 宮台氏はたしか本職?は社会学者であったと思う。
 こういう本を買ってきたのは産業医という仕事をしていて、最近の若い社会人に接していて何ともいいようのないひ弱さのようなものを感じるからで、自分だってその年頃には似たようなもの(あるいはそれ以下)であったとは思うが、それでもである。
 「文庫版あとがき」で「1950年代後半から20年ほどだが民主制(制度としての民主主義)の健全な作動が信頼される時期が続いた」と宮台氏は書いている。わたくしが10歳から30歳くらいまでということである。最近、つくづくと感じるのが、わたくしはいい時期に生きてきたのだなあということである。もちろんこれは後智恵で、その時期は東西冷戦の時期でもあり、核戦争による地球滅亡の可能性ということも現実の可能性として信じられていたということもある。結局それはおきなかったから今こんなことを書いている。
 宮台氏は「読者が知る社会学は、1950年代後半から1990年頃までの、大衆社会論的な問題設定を忘れた「呑気な社会学」だろう。民主制の作動がそれなりに信頼できたからこそ、フェミニズムやカルチャラルスタディーズのように「民主主義を前提とした覇権」の主題化がなされた。だが民主制の作動が懐疑されるようになると「呑気な社会学」は後景に退いた」とも書いている。わたくしは「呑気な」時代に10歳から45歳頃までを過ごしたのである。
 本書のテーマは「〈感情の劣化〉に抗う」ということなのだそうである。そして下敷きにしているのがアドラーの理論だという。最近アドラーが小ブームのようであるが、どうも精神分析学というのは苦手である。話がうますぎるという気がして仕方がない。つまり面白すぎる。
 本書を読むかぎり宮台氏は大学教員としての仕事もきわめて真っ当にしている人らしい。