坂本龍一さん

 片山杜秀さんの「片山杜秀の本6 現代政治と現代音楽」(ARTES 2013)の冒頭に「坂本龍一井上ひさし」という文があり、「坂本は日本を代表する著名な作曲家であるが、誰でも知っているメロディをたくさん作っているかというと・・戦場のメリークリスマスのテーマとEnergy Flowくらいではないか」とある。わたくしも同様である。
 片山氏は、坂本氏はまた「いろいろなスタイルを編集する能力において類まれな才能を持っていた人であった」ともいっている。もはや時代は個性ではなく、そのような才能を求めるようになってきているのかもしれない。
 日本の作曲家で世界的に有名だったひととしては武満徹さんがいる。わたくしには、初期の「遮られない休息」などはよくわからないし、「弦楽のためのレクイエム」もいま一つ、「ノベンバー・ステップス」も琵琶と尺八という楽器が西洋人にあたえる驚きに頼りすぎているように思うけれども、ギターのための曲、合唱曲などは素晴らしいし、「波の盆」(テレビドラマ)につけた音楽などは、この曲を演奏した時にコンマスのひとが泣いていた(指揮者も?)とかいう話もあるくらいであり、とてもとても美しい音楽である。
 作曲家であるからには曲を作ってなんぼであるはずで、坂本氏のように高名なわりには知られるメロディをあまり残していないというのはちょっと不思議な存在ではある。時代が変わろうとしているのだろうか?