太宰治 「お伽草紙」

   [新潮文庫 1972年初版 原著1945年初版]


 小林信彦の本を読んでいて読みたくなった。
 面白い。「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」の4編をおさめる。
 「瘤取り」のお爺さんも、「浦島さん」の浦島も、「カチカチ山」の狸も、「舌切雀」のお爺さんもみんな自分のことに思えるのが怖い。というか「男」というもののエッセンスなんだろうな、と思う。ということは、「瘤取り」のお婆さんも、「浦島さん」の乙姫も、「カチカチ山」の兎も、「舌切雀」のお婆さんも雀も、みな女性のエッセンスということになる。ということで、「お伽草紙」は男にとっての女の怖さについての話なのである。そこに「浦島さん」の亀のような面白いキャラクターも登場するし、大した芸である。
 「惚れたが悪いか」という台詞の出典はここであった。本当に「カチカチ山」の狸は可哀相。男って可哀相。