「日日平安」

 
 今「椿三十郎」のリメイク映画が公開されているらしい。
 「椿三十郎」の原作は山本周五郎の「日日平安」とされている。山本周五郎の小説はひとつも読んでいないから、これも読んでいない。
 原作といっても「椿三十郎」のいくつかのエピソードが関係する程度であるらしい。
 ブログをはじめるときにどんな題にしようかなと考えて、ネットをいろいろとみてみたら、荷風の「断腸亭日乗」のもじりのような題名が多くあった。日記というのは平凡でつまらないと思うと、日乗といったほうに目がむくらしい。
 陸奥宗光の「蹇々録」なんていうのを思い出して(もちろん読んでいない)、「・・録」というというのを考えているうちに、「日々平安録」というのを思いついた。いうまでもなく「椿三十郎」のタイトル画面で原作、山本周五郎「日日平安」とあったのを思い出したわけである。あの活劇と「日日平安」というタイトルが不似合いだなあ、と思ったので印象に残っていたのかもしれない。
 「椿三十郎」で一番印象的なのは、最後にでてくる伊藤雄之助演じる城代家老である。この題を思いついたときに頭にあったのも、伊藤雄之助のあの馬顔であった(といっても、みていない人にはわからないであろうが)。仲代達也演じる室戸半兵衛は「俺も相当に悪い」などといきがっているわりには、しょっちゅう騙されてばかりで気の毒であるが、それに較べれば、この城代家老のほうがずっと悪である。
 昔からこういう悪い人間にあこがれがあるらしい。「純粋真直ぐ君」が苦手である。青いとか青臭いというのがいやらしい。あの映画で「純粋真直ぐ君」は9人の若侍たちなのであるが、それを「お前たち、危なっかしくて見ていられねえ」という椿三十郎も、城代家老から見れば、お釈迦様の手のひらの上で踊っているわけである。雨に風にも負けていいから、こういう悪い人間になりたいものである。
 最近、椿三十郎がリメイクされてるという話題をきいて、今となってははるか昔のようにも思える、2年前、ブログをはじめたころを思い出した。