今日入手した本

 
 まだ100頁ちょっとしか読んでいないが衝撃的な本。
 わたくしはまったく存知あげあなかったが、著者は専門の物理学の分野では赫々たる成果をあげている著名な学者のようである。
 本書は生命の発生が必然であること、それが物理学の根本原理から説明できることを述べているらしい(まだ途中なので)。
 わたくしにとって一番衝撃的であったのは、本書は物質と生命の間に明確な区切りを引かないこと、進化には方向性があることを、どうやら述べているらしいことである。
 「モノ」と「生命体」のあいだには明確な線が引けること。進化は偶然によるので、方向性を持たないこと、の二つがわたくしがいろいろなことを理解していくうえでの根っこにあるものであったので、その両者が間違っているのかもしれないとなると非常に困る。
 著者の主張。1)地球は誕生以来、熱を放出し続けて冷え続けてきている。2)そうであれば、エントロピーは減少し続けている。3)そうであれば、地球は複雑な構造に秩序化(組織化)しなくてはならない(熱力学の第2法則)。つまり地球は複雑化の方向に進化し続けている。4)地球にあるH・C・N・Oなどの軽元素も秩序化していく。つまり有機分子が生成されてくる。そして生命も発生する。5)生まれた生命もまた複雑化の方向に進化し続ける。6)地球の熱放出が終わって、放射性崩壊による熱とつりあうようになるまで、万物の進化は続く。6)とすれば、「生命の起源」は地球史的必然である。7)高温の惑星型天体が冷却していくのは物理学の法則の必然の結果であるので、地球以外にも生命が誕生している可能性はある。しかし、地球史で生命が発生したのは地球の条件の偶然によるので、銀河系のなかで生命があるのは地球だけである可能性も高い、というようなことらしい。
 著者は生命の誕生は熱力学の法則によるとしているのであって、熱力学の法則が生命をつくるとしているわけではないし(と思う)、進化に方向性があるといっても、複雑化という方向ではあっても高等化とはいっていないので、わたくしの見方とまったく異なるということではないのかもしれないが、やはり衝撃である。
 「“物理”とか“熱力学”と聞いただけで耳に栓をする読者もいそうですが、物理とは物の道理のことです。そして“話せばわかる”のが道理です。以下を読み続けてみてください。」(p61) 耳が痛い。
 大陸移動説から入り、全地球流動へと進み、その中から物質の「進化」と「生命の発生」を説明していく構成はきわめて論理的で、説得力に富む。この手の本の書き方として規範的なもののように思う。