ダン・ブラウン 「ダ・ヴィンチ・コード」

  [角川書店 2004年5月30日 初版]


 基本的に暗号解読小説。その暗号解読の過程でキリスト教裏面史にかんする薀蓄が語られるという仕掛け。上巻を読んでいて、わたくしには初耳の話でも荒俣宏みたいな物知りなら、そんなことみんな俺は知っているぜ、というのだろうなと思っていたら、あにかはからんや、下巻の解説を荒俣宏が書いていた。その解説がユニークで自分の「レックス・ムンディ」などという小説を公然とすすめて、ほとんど、こんな小説読むくらいなら俺のを読んだほうがよほど面白いぜ、といわんばかり。
 たしかに、小説としてはすかすかで、一般にミステリというのは謎解きの部分になると、それまでの謎が合理的にちんまりと収まってきて、興ざめになることが多いが、この小説はそれまでに広げた謎の辻褄を合わせるのに精一杯で、もう小説としては破綻寸前というか、すでに破綻しているというか、ちょっとプロとしてはまずいのではないの、というかんじ。
 わたくしとしては、荒俣氏の「帝都物語」のほうがよっぽど面白いけれど、こちらから見れば東京裏面史が面白いように、キリスト教圏の人からみれば、こういう話は面白いのだろうなとは思う。
 キリストが結婚していて子供がいたなんてことを書いて、原理主義者に刺されないかしら?