GALAPAGOS使用記

 
 メディアタブレットGALAPAGOSの小さい方(5.5型モバイルモデル)をしばらく前から使用(試用)しているので感想を書いてみる。
 電子書籍である程度の分量の本を読んだのは村上龍の「歌うクジラ」が初めてだった。これは坂本龍一の音楽がところどころに挿入されていたりしている一種の総合作品であり、単にテキストを読むという目的に特化したものとはいえないものだったが、とにかく読み通した。iPADで読んだのだが、iPODtoutchでも読めるようになっているので、そちらでも読んでみた。小さな画面で横書きというのはつらいことがわかったが、読むだけならなんとかいけそうに思えてきた。それで入手したいたがほとんど使ってはいなかった「i文庫」で青空文庫漱石「明暗」を読んでみたところ、読めてしまい、ついに読了してしまった。いつか読もうと思って買ってあった新書版の漱石全集では上下巻で500ページ強のものが1500ページ以上となる。全集は二段組だからその段の一つ弱がi文庫での1ページに相当するわけである。新字新かなとなっているから、巻頭は「醫者は探りを入れた後で、手術台の上から津田を下した。/ 「矢張穴が腸迄續いてゐたんでした。此前探つた時は、途中に瘢痕の隆起があつたので、つい其所が行き留りだとばかり思つて、あゝ云つたんですが、今日疎通を好くする為に、其処をがりゝ掻き落して見ると、まだ奥があるんです」⇒「医者は探りを入れた後で、手術台の上から津田を下した。/ 「やっぱり穴が腸まで続いているんでした。この前探った時は、途中に瘢痕の隆起があつたので、ついそこが行きどまるだとばかり思って、ああ云ったんですが、今日疎通を好くするために、そいつをがりがり掻き落して見るとまだ奥があるんです」となる。なんだかすらすら読めてしまった原因の一つは、この新字新かなへの変換があるのかもしれない。旧字旧かなのほうが漱石らしいのではあるが。
 最初、このブログをふくめ、だいぶたまった自分のtextをそこに収納整理して、読んでみようと思ったのが、実は、久しぶりに「i文庫」を使ってみた理由である。ところがどうやっても、textをそこで読める形でとりこめない。iPAD用の「i文庫HD」でならそれが簡単にできるのだが・・。それで、その目的はあきらめて、漱石などを読んでみることになった。
 ということで、電子書籍を読むためというより、自分のtextの収納整理閲覧するのが主たる目的で「GALAPAGOS」を購入した(iPADではいささか重く大きく携帯には不便なので)。実は最初、ソニーのReaderのをほうを考えた(こちらのほうが安いし)。しかし店頭でさわってみて、画面の切り替えのときに一瞬暗くなるのが気になった(これは電子ペーパーの特性らしく、Kindleでも同じらしい)のと自分で作成したtextをとりこんでも縦書きで表示できないという噂をきいて(本当かどうかは確認はしていない)、それでこちらを購入してみた。購入までの手続きが面倒であるのと、最初のwifiの設定でてまどった(手動で設定したほうが早かった)ということはあるが、現在は順調に動いている。
 最初、驚いたのは中身が空っぽであることで、何冊かおまけの本を入れておいてくれてもいいのではないかと思った。なにもないから、本体を入手しただけでは読書体験を始められないのである。たとえば、古今和歌集奥の細道と聖書(それもどうせなら文語訳の)くらい入れておいてもいいのではないだろうか? 誰も読まないかもしれないが、ホテルに聖書が置いてあるようなものである。何かないとさびしいのはないだろうか?
 ストアをみてみるとあまり読みたい本が見当たらないので、いささかびっくりした。わたくしの読書傾向が偏っているだけなのかもしれないが、生きのいい本がみあたらないのである。現代という時代と切り結んでいるというフレッシュな本が少ない。ハウツー本のようなものが在庫のほとんどである。やむなく、今は太宰治が一冊、林望さんの本が一冊入っているだけとなっている。
 この小さいモバイルモデルでは、雑誌や新聞を読むのは、いささかつらいのではないかと思う。一覧性というのもやはり大事である。しかしまだ実際に新聞や雑誌を購入してみたわけではないので、本当のところはよくわからない。
 それで今のところは自分の作ったtextがほとんどを占領している。取り込みは簡単で、たしかにこうすると読みやすい。誤字脱字などが続々見つかってくる。やはり縦書きのほうが自然ということなのだろうか?
 Pomeraはtext作成専用の機械である。個人的にはキーボード折り畳み式とかではなく、もっと横長になってもいいから、ふたがモニターで底がキーボードという、今よりも単純な構造でさらに薄いものができないものかと思っている。Pomeraのようなものがある程度売れるということは、メモをとるためではなく、もっと長文のtextを出先で作成するの仕事であるひとがある程度の数は存在するということであろう。そうであるなら自分が作成したtextを持ち歩く必要があるひともある程度は存在するのではないかと思う。もちろんクラウドなんたらを利用するが現代の作法なのであるかもしれないが、それはコンピュータ環境下でなければ利用できない(携帯電話からでもある程度は可能なのかもしれないが)。つねに自分の参照したいtextを収納して持ち歩けるかさばらない機器というのは、それほどの需要はないかもしれないが、ある程度の需要があるのではないだろうか? そして何かの時には、それでついで本も読める(そのためには数冊の本が入っていればよくて、千冊もの本をいれておく必要はない)というような、text.file をきれいな読みやすいレイアウトと表示で読める機器(+本も読める機器)というのはできないものだろうか? これだけブログとかが流行しているのだから、そういうものの需要はある程度はあるのではないかという気がする。