こういう本をよむと本当に自分は本を読んでいないことを痛感する。百冊以上の本が論じられているが、その中でまがりなりにも読了した本はA・
ブルックナー「秋のホテル」、バージェス「戦慄」、フォースター「
ハワーズ・エンド」、
フォーサイス「
ジャッカルの日」、
ゴールディング「
蝿の王」、ヒューズ「ジャマ
イカの烈風」、ジェイムズ「女には向かない職業」、
クンデラ「小説の精神」、ロッジ「小説の技法」、
ナボコフ「
ロシア文学講義」、ウォー「大転落」と10冊程度。しかもミステリないしはミステリ仕立て、子ども用の本ないしは童話仕立て、あとは小説論で、大人用の小説などはほとんどない。こまったものであるが、そういう人のためにもこの本はあるのかもしれない。
鹿島茂氏の解説によれば、書評の最大の功徳の一つは読んでいない本について読んだふりをできることだそうである。せいぜい利用しようと思う。
柴田訳のこの本は
吉田健一がさかんに褒めていて、それで本棚には昭和26年
創元社刊の全一〇冊がそろっておいてある。今回の本は文庫本一冊であるから抄録であろう。この文庫を読んで面白ければ、結局ちらっと見ただけでほとんど読まずじまいになっていた本棚の本もとりだしてみようかと思う。