今日入手した本

職業としての小説家 (Switch library)

職業としての小説家 (Switch library)

 この本は紀伊國屋が買い占めて一般の書店にはすぐには流通しないのかと思ったら、普通の書店においてあった。
 村上氏の小説論というか物語論というかといったもので、ざっとみた限りではどこかで以前に読んだことがある話が多いような気がするが、最後の河合隼雄の追悼文で、いまだに河合隼雄の本を読んでいない、ユングの著作もまだ一冊もきちんと読んでいない、と書いてあるのが意外だった。
 村上龍が「おしゃれと無縁に生きる」といった方向の本を書き、村上春樹がこういう風な本を出すというのは、二人の村上が随分と遠いところにきてしまっているなということを感じる。龍さんは小説方法論といった方向にはいま全然関心がないだろうと思う。
 「双子の男の子が同じ環境でグレはじめたんだけどかたっぽの龍くんは硬派のヤクザになり、もういっぽうの春樹くんは退行してナンパなおタクになりました」というのは中島梓だけれども(「夢見る頃を過ぎても」)、本当に龍くんは硬派の経済&軍事マニアになっているし、春樹さんは「魂の奥底にあるもの」などと書く軟派な文学オタクの方向にいっている。
 ところで、この方向の春樹さんの本を読んでいて、いつも???なのが、春樹さんの奥さんというのはどういうひとなのかなということである。想像もできない。小説ができると初めに読んでもらうのが奥さんというのが???である。そもそも春樹さんの書く小説のどこからもそんな夫婦のイメージは浮かんでこない。新世代の作家ということなのだろうか? 旧世代の作家にとっては漱石鷗外から第三の新人まで、奥さんというのはただもう恐ろしい存在で、筆にするだに憚られるというようなものだったのではないだろうか? 本当にわからない。