C. S. Lewis 「The Chronicles of Narnia 2 The Lion, the Witch and the Wardrobe 」 

[1950年初版]


 第一巻の「Magician's nephew 」が「創世記」なら、この巻は「キリストの死と再生」である。
 そして、この巻にもあるのが、<神>であるライオン、アスランの孤独と寂しさである。<神>は絶対的にひとりぽっちなのである。誰一人として友のいない唯一絶対者。
 キリスト教神学を背景にしていることは確かなのであろうが、むしろ、感じられるのは異教的な<王の死>と<世界の再生>というカーニバル的な世界である。
 魔女の支配する<冬>の世界から、ライオン神アスランによる<春>の甦りの物語を読んでいて、吉田健一の「英国の文学」にある「イギリスの冬の醜さと、それにくらべた春の美しさ」という指摘を思い出した。
 真夏(イギリスの6月)の夜の夢。
 Shall I compare thee to a summer's day?
 この物語でもいきなり冬から midsummer になる。
 これもまたイギリスの文学なのである。


(2006年3月13日ホームページhttp://members.jcom.home.ne.jp/j-miyaza/より移植)

The Chronicles of Narnia (adult)

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