野口悠紀雄「「超」文章法 伝えたいことをどう書くか」

 [中公新書 2002年10月25日初版]

 文学的な文章ではなく、論述文をどのように書くかについての本。木下是雄の「理科系の作文技術」などの系列に連なるものである。このごろの本は相当気楽に書き流しているように見える本が多いが、これは著者が気合を入れて書いているのがわかって、なかなか好ましいものとなっている。
 旧来の文章読本とは異なり、文体、表現などよりも、メッセージ、骨組みを重視する。それとパソコンを利用した推敲修正を前提として、とにかく書き始めるという提案も従来のものとは異なっているかもしれない。
 論述の文章の核には、一言でいえる何か、いいたい何かがなければならない。これは小説とは反対である。一言でいえる何かに集約しうる小説はひとに感動を与えない。
 そのメッセージはあるとき天から降ってくる。しかし、そのためには考え抜かなければならない。異質のものがぶつかるときに何かが生まれる。友人との会話、インタビューもその機会であるし、何より、本を読むということは著者との対話である。
 メッセージを得たら、それをどのように人をひきつける文章としていくか? それを手取り足取りという感じでノウハウを披露している。
 巻末に必読の推薦図書として、「理科系の作文技術」とスティーブン・キングの「小説作法」があげられている。それで久しぶりに「小説作法」をとりだして読み始めたら、面白くて読みふけってしまった。キングは面白い。