橋本治 「女賊」

   [集英社 1998年9月30日 初版]


 これも初めて読む。江戸川乱歩原作「黒蜥蜴」による一人芝居であるが、乱歩の原作も、三島由紀夫の「黒蜥蜴」もどちらも読んでいない。わたしは乱歩というのは根は健全な人ではないかと思うので、これは乱歩の原作より、三島の「黒蜥蜴」に近いような気がする。
 テーマが凡俗であることの拒否だから、どう考えても三島かなあと。
 まあ、とにかくチェホフの芝居などとは正反対のもの。祭りとしての劇。もともと劇というのがそういうものなのかもしれないが・・・。そもそも、新劇というのが異常であったということだけなのかもしれないけれども。これまた、近代を否定した江戸への回帰? でも江戸の歌舞伎には凡俗の拒否なんていうのはなかっただろうと思うが。