[ポプラ社2005年2月初版]
江戸川乱歩の少年探偵団ものは、わたしがはじめて熱中した書物である。小学校高学年に「少年探偵団」もの、中学校で「風と共に去りぬ」、高校で太宰治「津軽」、大学教養学部で吉行淳之介、医学部にきて福田恆在、それを経由して吉田健一というのが大まかな熱中歴である。
最近本屋で乱歩の少年探偵団シリーズが山積みになっているので一冊買ってきてみた。昔熱中したのはどんなものだったかというような興味で買ってきた。読んでみてまあまあ面白かったが、今時の子どもはこの程度のトリックには納得しないかもしれないと思った。それを素直にうけいれていたのだから、まだそのころのわたしは純真であったのであろう。それと敵役の怪人二十面相というのが存外に貧相というか貧乏くさいのが意外であった。あまりというか全然魅力的ではない。その点で今の子どもには受けないのではないかと思う。ジェームス・ボンドの相手のようなとんでもない金持ちとか途方もない教養人とかいうのではないのである。もっとも、この「青銅の魔人」は戦後の混乱期、日本の貧困の絶頂期を背景にしているので、そういった豪華絢爛はのぞむのは無理というものかもしれないが。やはりイアン・フレミングはあるいはジェームス・ボンドはイギリス植民地帝国の栄光栄華を背にしていたのである。
あらためてわたくしの子ども時代の日本は貧しかったのだなあということを認識した。なにしろラジオの時代だし。それで、そのころ、「少年探偵団」というラジオ番組があったのを思い出した。内容はまったく覚えていないが、その主題歌だけをなんとなく覚えている。
僕らは少年探偵団
勇気凛々瑠璃の色
望みに燃える呼び声は
朝焼け空に木魂する
僕らは少年探偵団
とかいうのではなかったかと思う。今から思うと子どもの番組にしては難しい言葉を使っている。
「りんりんるりのいろ」とか「のぞみにもえるよびごえ」とか頭韻を踏んでいたりしてなかなかのものである。
そういえば、新諸国物語「笛吹童子」なんて番組もあった。その主題歌が福田蘭童という人の作で、「ひゃらーり ひゃられーろ 何処で吹くのか不思議な笛だ」とかいうようなものだった気がする。なんだかどうでもいいことだけ覚えているのは困ったものである。ちなみに、「ふくだらんどう」は「不 下らんぞ」=「下らなくない」であるという話もどこかで読んだ。二葉亭四迷=くたばってしまえ、のようなもの。福田蘭童、父は青木繁、子どもが石橋エータロー(クレージー・キャッツ)。違ったかな?
ET IN ARCADIA EGO。
(2006年4月16日ホームページhttp://members.jcom.home.ne.jp/j-miyaza/より移植)

- 作者: 江戸川乱歩,藤田新策
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2005/02
- メディア: 単行本
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