今日入手した本

 

宗教とは何か

宗教とは何か

 イーグルトンの本は最初は例によって「文学部唯野教授」から入ったのだが、今みたら本棚に4冊ほど著書があった。このひと左翼だというのだが、どこが左翼なのかよくわからない。
 この本はドーキンスデネットたちを批判したところもある本らしい。確かにドーキンスらの宗教批判は滅茶苦茶で、それというのも相手にしているのが創造論者という箸にも棒にもかからない連中だからなのであるが、そういう人たちを批判しているうちにどんどんと議論のレベルが落ちてきて、相手と同じ土俵で下らない水掛け論に終始するようになってしまっている。そういう箸にも棒にもかからない連中が世論を左右する大きな力をもっているのだからせざるをえないというのがドーキンスらの主張なのであろうが、それはアメリカ文化の成熟の問題であって、ドーキンスらがどうこういってどうにかなる問題ではない。もちろん、これからアメリカという国が成熟するとはかぎらず、啓蒙以前に逆戻りしてしまうかもしれないし、それはそれでしょうがないのだが、少なくもドーキンスらが売っている喧嘩はアメリカという国を成熟させるのに資するところがあるとは思えないので、むしろその未熟を固定させるほうに加担しているのではないかと思う。どう考えても、ドーキンスらの議論には原理主義的でファナティックな色調がつきまとっている。S・J・グールドなどとの喧嘩がちょうどいいので、創造論者などというのは放っておくしかない。
 そういうドーキンスなどを相手にすると、イーグルトンは冴えるようで、まだぱらぱらと読んだだけだが、面白そうな本である。
 
日本の医者 (こころの科学叢書 )

日本の医者 (こころの科学叢書 )

 新聞の広告にでていた本。中井氏が若いころに筆名で書いた文章を復刻したものらしい。中井氏は最初ウイルス学者として出発して後に精神科医に転じたひとである。氏の本を読んでも今ひとつその経緯がわからないところがあった。この本は氏の若いときの文章なので、そのあたりが何かわかるであろうかという興味もあって買ってきたのだが、必ずしもそういうことが書かれているわけではないらしい。まだ一部を読んだだけだが、日本の医療制度について(たとえば医学博士号の歴史)いくつか新しいことを知った。医局という制度がいまだに大きな力をもっている日本の医療の世界の特殊性は、50年前に書かれた本書の記述とそれほどは変わっていないのが驚きである。