(26)2011・5・12「東北の医療」

 
 出身大学の関連病院長会議の幹事会というのがあり、その末席に名を連ねているので出席してきた。年に一回おこなっている関連病院の関係者の意見交換と親睦の会の準備会で、その会ではいつも何かの講演をおこなっているので、今年はどんな話にしたらいいのかというのが主な議題であった。例年は「保険制度はいったいこれからどうなるのか?」といった病院を経営する側としては関心はあるが、あまり意気が上がらない話題がとりあげられることが多い(昨年は「診療報酬改定について」)が、今年は「東北大震災への医療支援」と「放射線被曝傷害について」というアカデミックというかホットというかの話題がとりあげられることになった。
 ある大学側の先生がいうのは「もうJMATには意味がないことははっきりした。今後の問題は東北の医療体制、特に病院をどうしていくかである。これは本当に深刻で、本当に大変で、展望がまったくみえない。」
 わたくしのように地域に密着して働いている人間にはまったく全体はみえないわけだが、大学にいるといろいろの情報が入ってくるようで、そこから見ると、とんでもなく深刻な事態がいやでも聞こえてくるらしい。
 JMATなどは避難所の人への応急的な医療などをととりあえず担当するわけであるが、長期的な医療体制の再構築をどうしていくかということになれば、瓦礫の原となったところに町を再建していくような途方もない課題になっていくのであろう。
 大学の学部長と病院長が今年交代したので、本来ならこの関連病院長会で抱負などを述べるのが慣例なのであるが、今年はなしということになった。今度の震災のため、大学病院の予算がどうなるかまったくわからないのだそうである。偉そうに抱負などを述べても、予算がつかず何もできないということもありえるとのことで、今年は勘弁してほしいということになった。震災は現地ばかりでなく、日本全国の医療に実に大きな影響をあたえることになりそうである。