柳瀬睦男「現代物理学と新しい世界像」

    岩波現代選書NS 1984年
 
 昨日とりあげたデイヴィスの「ブラックホールと宇宙の崩壊」の本棚のとなりにおいてあった。1984年の出版で、その当時の理論物理学の論点をきわめて真摯に論じているのだが、やはりカントールだとか「クレタ人の嘘」の話が話題になっている。この本を思い出したのは柳瀬氏が物理学者であると同時にイエズス会の司祭でもあるという特異なひとであるからで、それで神学の問題も論じられるのだが、印象的なのはきわめて姿勢が低いというか、謙虚であるということで、「神」といったことを大上段に振りかざすのではなく、わたくしはこう考えるのだがというように、物理学の問題を論じるのとまったく同じ態度で神の問題がまた論じられている。西欧のひとの書くものとは態度がまったく異なるのである。こういう態度であればドーキンスさんも別に目くじらをたてないのではないかと思う。

 
 なんだか1980年半ばはこの手の本ばかりを読んでいたみたいである。