今日入手した本

A・D・アクゼル「「無限に魅入られた天才数学者たち」

 こういうタイトルであるが原題は「The Mystery of the Aleph」で「アレフのミステリー」、カントールの伝記である。
 カントールの名前をはじめて知ったのはP・C・W・デイヴィスの「ブラックホールと宇宙の崩壊」を読んだときで、その第二章「無限大とは何か」でカントール対角線論法とか無限大の濃度とかのいろいろな奇妙奇天烈な話を知った。次がP・チュイリエの「反=科学史」で、カントールというのがいかに変な人だったかということも知った。
 本書はカントールの伝記を軸に無限大をめぐる見方の歴史を述べるという構成のものらしい。
 おそらく小学校の4年の時、友達と話していて「体積というのは面積に高さを掛ければいい」というようなことをいわれて、「そんなことはないだろう」と思ったのをいまだによく覚えている。まだ学校で面積は習っていても体積は習っていなかった頃なのだと思う。その話をした場所もありありと思い出せるくらいである。相当強烈で奇妙な違和感であった。面積には厚みがないからいくら重ねてもやはりゼロだろう、体積にはならないだろうと思ったのである。今から思うとわたくしが無限大ということに微かに接触したはじめての体験だったのかもしれないが、点をいくら集めても線にはならないとか、線をいくら並べても面積にはならないなどとは少しも考えずに、体積だけ変だと思ったのが情けないところである。
 それで、デーヴィスの本の後、一時、数学基礎論の概説書のようなものを解らないながらもかじってみたことがあるが、数学というのは正面からこられると、あるところから先はまったくもう駄目になる。伝記とかに絡めてであれば、少しは解った気になるかもしれないというのが淡い期待なのだが、でもやはりたぶん無理で、理解できるのはカントールカトリック教会との確執といった部分だけなのだろうなとも思う。

ブラックホールと宇宙の崩壊 (岩波現代選書 NS 535)

ブラックホールと宇宙の崩壊 (岩波現代選書 NS 535)

反=科学史 (1985年)

反=科学史 (1985年)