今日入手した本

スピノザの方法

スピノザの方法

 4月から一部の仕事から離れられることになり、特に夜の会合などから大幅に解放されることになりそうで、それで少しお勉強をはじめようかと思っている。その一つとして朝日カルチャーセンターで國分功一郎氏の「スピノザの方法」という講義をきくことにした。
 わたくしは根っからの哲学音痴なのだが、それでもスピノザという名前が気になるのは、一つにはダマシオという脳学者の書いた「感じる脳」という本でスピノザが言及されていたということがある。この著の原題は「Looking for Spinoza Joy,Sorrow, and the Feeling Brain」というものである。ダマシオの論はきわめて説得的であると思った。
 もう一つは丹生谷貴志氏が「獣としての人間」という文で、吉田健一を論じて「ここにあらゆる観念や希望を嫌悪し、ただ「言葉」を本質的属性として纏ったスピノザ的な(?)「乞食」に身をやつした言葉を書く「獣」が現れるわけである」といってたということがある。スピノザというひとは吉田健一のような人なのかと思った。それで「エチカ」にちょっと手を出してみたのだが、見事に撃退された。とりつく島がないというか、何のとっかかりもなく、スピノザという人間が全然見えてこなかった。それでドゥルーズの「スピノザ」を読んでみた。丹生谷氏がドゥルーズ学者であるということもあった。吉田健一丹生谷貴志ドゥルーズスピノザという路線でかすかに吉田健一スピノザがつながるるのではないかと思えた。丹生谷氏は広い意味でポストモダンの陣営のひとであると思う。吉田氏は反=ヨーロッパ19世紀すなわち反=近代の人である。吉田健一ポストモダン思想の関連というようなことに、それで関心があって、その鍵のひとつがスピノザなのかなという気がしていて、それでこの講義をきいてみようかと思った。この講義は「知性改善論」という本を読んでいくものらしいが、翻訳の入手はかなり困難であるらしく、もし予習をするのであればということで國分氏が指定していたのが本書である。結構高い本であるが、買ってみることにした。
 
暇と退屈の倫理学

暇と退屈の倫理学

 これも同じく國分氏の本であるが、最近、評判になっている本としてどこかで紹介されていた。とても面白くすでに三分の一くらい読んでしまった。こちらが関心がある名前が次々にでてくるので、自分の頭の整理としても非常に役立ちそうである。中途での感想としてはやや、クリアカットに議論が進みすぎるというかためらいや逡巡がなく、夾雑物をもう少し残しならが議論が進んでほしいと感じる。それと西田正規というひとの提唱する「定住革命」論に少し依拠しすぎているようにも思う。つい最近放送されているNHKの「ヒューマン」というドキュメンタリーもまさにこのあたりのことを扱っているわけで、農耕のはじまり⇒定住化という従来からの見方のうえにたった番組となっている。定住化⇒農耕が必要となるという見方は非常に刺激的で大変興味深い仮説であるとは思うが、まだまだ十分に広く支持されているとはいえない仮説であると思うので、その辺りの論の運び方はいささか強引であるように感じた。一番違和感を感じたのは「まえがき」と「あとがき」の一人称が「俺」となっていることで、本文中では一切、一人称はつかわれていないように思うので、それが余計に浮いてみえる。しかしそれでもあえて押しとおしたのだろうと思うので、國分氏は激しいひとなのだろうと思う。