その12 チェロ3
チェロを習い始めて2月たった。それ自体はとくに書くこともなく、65の手習いの悲惨を実感しているだけである。ゴールデン・ウィーク明けに衝動的にチェロを購入してしまったのは、衝動だから理由などないが、強いていえば、だいぶ昔にヴァイオリンを弾いていた女医さんに「先生、これから何か楽器をやるならチェロがいいよ。あれは簡単に音がでるから」といわれたのが頭に残っていたためかなという気もする。しかしそんなのは嘘の皮である。梅が枝の手水鉢だって叩けば音くらいはでる。
はじめる前には全然気がつかなかったのだが、チェロブームなのだそうで、定年後に一念発起してチェロをはじめるおじさんが結構多いらしい。おじさんにかぎらずある年齢からチェロをはじめるひとが相当いるらしいことはネットを検索しているとすぐにわかる。そして恐ろしいことに、そういう初心者たちが臆面もなく自分の演奏?をアップしているのである。初学者を勇気づけるためにしているのか、なんのためにそんなことをしているのかよくわからないが、こういうのをきくとあらためてプロというのが伊達ではないことが理解できる。チェロは重音も弾くことができるようだが、基本的には単旋律を弾くものである。しかし、同じ旋律がアマチュア初心者とプロではまったくもう違ってしまうのである。いま「ヨーヨーマ プレイズ・モリコーネ」というCDを聴きながら書いているが、エンリオ・モルコーネという稀代のメロディー作家の旋律をもう朗々と歌いあげている。
これからいくら頑張っても、あの初学者たちの演奏レベルまでいくのがやっとなのだろうと思うとなんだかなあであるが、まあ石の上に3年くらいは座ってみようかと思っている。