今日入手した本

最後に見たパリ

最後に見たパリ

 エリオット・ポールというひとは、おそらく日本では全く無名のひとで、吉田健一オタク以外にはほとんど知るひとはいないのではないだろうか? 吉田氏の本のいろいろなところでエリオット・ポールの名前はでてくる。「書架記」には「エリオット・ポオルの探偵小説」という章があり、そこでの吉田氏によれば、この「パリ滞在記は恐らくパリに就て今までに書かれた無数の本の中での白眉で荷風の「ふらんす物語」などはこれに比べれば寝言に近い感じがする」ということである。そこにあるように、「第二次世界大戦で陥落する直前のパリ」を描いたものである。とすれば、もう70年以上前の話である。そのころのパリについてそう多くのひとが関心をもつとは思えない。
 わたくしは健一オタクなので、以前、翻訳がでていない「The Last Time I Saw Paris」を原書で取り寄せてみたのだが、例によって英語が難しく読めなかった。今回、この翻訳がでることを知って、早速、とりよせてみた。訳者が吉田暁子氏である。吉田健一の娘さんは吉田暁子といったはずで、この訳者は娘さんに違いないと思うのだが、「訳者あとがき」には「吉田健一が『書架記』で激賞しているし」などと他人のように書いている。吉田健一吉田茂の息子であることを宣伝に使われることを嫌ったように、暁子氏も健一の娘であることをぬきにしてこの訳書を評価してほしいということなのかなとも思うが、同姓同名の別の方なのだろうか?
 題名は「最後にパリを見た時」のほうが素直でいいような気がする。
 あとは同じポールの「ルウブル博物館でのごたごた」を誰か訳してくれないだろうか? 実はずっと以前に翻訳がでているのだが、古書で一万円以上するので業腹で買っていない。原書は入手できなかった。