
- 作者: 立花隆,薈田純一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/03/08
- メディア: 単行本
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何十人か?の応募者があり、その中で最高点は何点とかあって、自分でやってみたら、その最高点とほぼ同じくらいの点であった。結構、雑学はあるほうなのかなと思ったが、これは4択問題のような形式の出題だからで、イギリスの劇作家、「ハムレット」などで有名? 名前は? というような形式ならもうだめである。さすがにシェイクスピアはでてくると思うが、最近、老化がとみに進んでいるようで、とにかく固有名詞が思い出せなくて困っている。
立花氏の秘書的なことをしていた女性(だったと思う)が書いた一種の暴露本のような本も読んだことがあって(名前は失念)、それに「インターネットはグローバル・ブレイン」などを書いていたころの氏が実は一番よくアクセスしていたのはアダルト方面であったというようなことが書かれていて、怖いなあ、と思った。有名にはなりたくないものである。
本書でも「アメリカ性革命報告」を書くために資料として?海外で買ってきたエロ雑誌がたくさんあったのだが、「アメリカ性革命報告」の出版元である文春のスケベな編集者たちがみな持っていってしまった。惜しいことをした、などと書いてある。特にたくさん持っていったのは自分と文藝春秋社同期入社の湯川豊などと暴露している。可哀想な湯川さん。「何だかんだと言っても、男はみんなスケベだということですね(笑)」などと言っているが、単称言明をいくら集めても、そこから全称命題は引き出せないというのはヒューム−ポパー路線の基本であると思うのだが(笑)・・。
立花氏の試験である程度の点がとれたということは、氏の関心の方向とわたくしのがある程度一致しているからだと思うのだが、関心の方向が違うところがあるのも当然である。あちらの方面のことについてはここでは措いておくことにして、脳に関心を持つこと、分子生物学や物理や数学について素人的な興味を持っていることなどは共通していると思う。違うのは立花氏は文学方面にはほとんど関心がないようである点で、どうも作り話を読むことなど時間の無駄と思っているらしい。一方、立花氏はオカルトの方面にかなりの興味を持っているようであるが、わたくしは怪力乱神の方向は敬して遠ざけるようにしているので、その点もかなり異なるようである。ライヒとかへの関心、科学論でシャルダンが出てくるところ、宗教への(かなりかたよった?)方向からの関心、ガイア理論への傾倒などは、わたくしにはよく理解できないところである。
まだ100ページちょっとであるが、今回の原発事故について、(少なくともわたくしは)聞いたことのなかったことがいろいろと書いてあって、大変興味深かったので、それを抜き書きしてみる。
今回の福島原発が大惨事になったのは、発生した水素を外部に逃がせなかったからである。しかし最近の原発はすべて、水素が発生した段階で触媒で違う物質に変えてしまう装置を備えている。だから最近作られた原発では、そのような事故は金輪際おきない。チェルノブイリのような形の事故はその後の原発ではすべて対策済みとなっている。だからチェルノブイリ型の事故もおきる可能性はない。原発不要論は「原発は人間にはコントロールしきれない」という論である。しかし現在の原発はそうではない、コントロールできるものとなっている。人間のコントロールの及ばないのは、今回の福島のような旧タイプの原発くらいのものなのである。福島の原発を設計したアメリカで想定されていた想定外の事態とは竜巻であった。だから竜巻で冷却装置が破壊されないように、地下に予備電源を配置した。実際に竜巻がよく発生するアメリカの地域では普通の家でも地下室を備えていて、竜巻が発生するとすぐに地下室に避難する。さすがに日本ではこれは実情にそぐわないと思った。しかし設計者であるGEは「うちの設計図通りでなければ安全は保証できない」として、設計の変更を一切みとめなかった。とすれば今回の事故の相当部分はGEの責任である。東電ではなくGEに賠償要求をすべきなのである。今回の地震でも原発はきちんと停止した。だからある意味で原発の安全性を証明したものでもあった。事故処理のミスやGEの設計ミスがなければそうだったはずである。
今回の事故で、ドイツ・イタリア・スイスは反原発の方向に舵をきった。しかし世界中がそう動いたわけではない。ヨーロッパは送電線が国境を越えてつながっているから、フランスからの電力を買える。フランスは原発の歴史が長く、多重防御システムの周到さも日本とは桁の違うレベルである。フランスの電力は原発によって国際標準の4割のコストとなっている。そもそもフランスはキューリー夫人以来、放射能に関する科学の中心であった。最新の原発システムは多重防御システムが電源なしで働く。福島のような第二世代といわれる時代遅れのものはもう使われなくなっている。現在、中国が一挙に60基も建設をすすめている原発もこの最新のタイプのものである。ロシアもまた、過去にはチェルノブイリ事故をおこしたが、これは初期に建設された低レベルのもので、現在のレベルはまったく違っている。そもそも原発は原子力潜水艦の原子炉の転用からはじまったので、アメリカやロシアには技術開発の歴史と伝統がある。ロシアは高速増殖炉の研究を続けていて(おそらく、日本のもんじゅと同じような事故をたびたびおこしながら)ソヴィエト体制下、それを隠蔽して研究を続け、いまやロシアは高速増殖炉をすでに安定して稼働させるようになっている。日本では原発は怖いという声が大勢だが、日本の周囲の中国やロシアは原発大国として着々と歩んでいるという事実はぜひ知っていなくてはならない。
こういう方向の議論は、少なくともわたくしはまったく聞いたことがなかったので、読んでびっくりした。それでとりあえず記してみた。
立花氏の20万冊!くらいという蔵書を多数の写真も使って紹介した本。それで、結構、高い本になっている。