氏は、在野のひとでありアカデミーの外のひとであった。本書でも山本七平とか吉本隆明とかが大きくとりあげられているが、どちらも在野のひとである。橋爪大三郎氏によると、小室氏は「山本七平さんは天才だ。優れたアイディアがどんどん出てくる。でも、まるで学問的訓練を受けていないから、どうしようもない。そのため世の中から認められず、評価されず、ずいぶん損をしている。やっぱりちゃんと学問的な裏付けを与えないとだめだ」というようなことをいっていたのだそうである。吉本隆明の「共同幻想論」などというのも学者からみたら寝言のようなものであろう。
副島隆彦というひとが大いに発言していて大変面白いのだが、このひと、小室氏に以上に大変そうなひとである。
橋爪氏は、小室氏は山本七平氏と多くの点で共鳴するところがあるといっている。小室氏は原理論、山本氏は日本の現実についてねちねちと語るという行き方で、書き方がまったくことなるので、いままであまりそういうことは思っていなかったが、いわれてみると確かにそういう気がする。

- 作者: 山田昌弘
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/11/22
- メディア: 単行本
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ちなみに山田氏も小室ゼミの一員であったらしい。上の本でも発言している。山本氏は日本には日本独自の資本主義のエートスが江戸期から用意されていたとしたわけであるが、山田氏はそのエートスが日本社会において再生産されているだろうかという問題意識を示している。小室氏は複式簿記があるのが資本主義社会、それがなく大福帳のままであれば資本主義でないとしたのだそうである。山本氏は近代経営学など導入せず大福帳のままでやった会社が戦後の混乱を生き延びたというようなことをいっていた。この辺りが文明開化の小室氏と、江戸の知恵の信者の山本氏の違いなのだろうか?