今日入手した本。

 小室氏の本は比較的読んでいるほうではないかと思う。「文明開化のひと」という印象で、西欧に日本は遅れているので、その西欧の精華を徹底的に学ぼうとしつづけた愛国者なのだと思う。原理論のひとだから、切り口が鮮明で読んでいて頭が澄んでくる感じがして、自分も頭がよくなったような気がしてくる。
 氏は、在野のひとでありアカデミーの外のひとであった。本書でも山本七平とか吉本隆明とかが大きくとりあげられているが、どちらも在野のひとである。橋爪大三郎氏によると、小室氏は「山本七平さんは天才だ。優れたアイディアがどんどん出てくる。でも、まるで学問的訓練を受けていないから、どうしようもない。そのため世の中から認められず、評価されず、ずいぶん損をしている。やっぱりちゃんと学問的な裏付けを与えないとだめだ」というようなことをいっていたのだそうである。吉本隆明の「共同幻想論」などというのも学者からみたら寝言のようなものであろう。
 副島隆彦というひとが大いに発言していて大変面白いのだが、このひと、小室氏に以上に大変そうなひとである。
 橋爪氏は、小室氏は山本七平氏と多くの点で共鳴するところがあるといっている。小室氏は原理論、山本氏は日本の現実についてねちねちと語るという行き方で、書き方がまったくことなるので、いままであまりそういうことは思っていなかったが、いわれてみると確かにそういう気がする。
  最近の日本の行き方、特に会社の動向、グローバルスタンダードといわれるものへの対応をみていると、若いひとは大変だなあと思う。それでこのような方向の本を少し読んでいる。
 ちなみに山田氏も小室ゼミの一員であったらしい。上の本でも発言している。山本氏は日本には日本独自の資本主義のエートスが江戸期から用意されていたとしたわけであるが、山田氏はそのエートスが日本社会において再生産されているだろうかという問題意識を示している。小室氏は複式簿記があるのが資本主義社会、それがなく大福帳のままであれば資本主義でないとしたのだそうである。山本氏は近代経営学など導入せず大福帳のままでやった会社が戦後の混乱を生き延びたというようなことをいっていた。この辺りが文明開化の小室氏と、江戸の知恵の信者の山本氏の違いなのだろうか?