今日入手した本

武士道ー 侍社会の文化と倫理

武士道ー 侍社会の文化と倫理

 笠谷氏は「主君押し込め」などの研究で有名な近世、徳川時代の政治史を専門とする史学者。本書は、江戸時代に武士道というものが実際にはどのようなものであったかの研究。
 そのなかで、「甲陽軍鑑」で武士が戦場以外の場所でこころせねばならないこととして、16のことがあげられていることを示している。その内のいくつか。
 1)嘘をつかずに正直である事。
 2)互いに仲が悪くとも相手に対して暴慢の態度をとらぬ事。
 3)争論においては、言葉遣いに留意しつつ節度をもって臨むべき事。
 4)武士たちが共同所持する相知行の場合に、利己的な振る舞いをせぬ事。
 5)優れた武士の手柄を賞賛する態度を持する事。
 6)女色にふけることのない事。
 7)周囲の雰囲気はどうであれ、是は是、非は非と堂々と述べる事。
 8)狡猾に振る舞い、他人の無知に乗じて掠め取るなどのない事。
 9)相手が僧侶・百姓・町人であっても横柄な物言いをせぬ事。
 10)少しの手柄を立てようとも、傲慢な態度をとることなく謙虚であるべき事。
 11)金銭に目が眩んで筋違いの振る舞いをせぬ事。
 12)自己の境遇の優劣によって、他者への態度に左右のなく事。
 13)相手の境遇の優劣によって、自己の態度に左右のなき事。・・
 
 こういうことが書かれるのは、そうでない振る舞いが多くみられたからではあろうが。
 武士は食わねど高楊枝・・・治者の倫理というのはそういうものなのではないだろうか?
  
   書店で偶然みつけて、立ち読みして、面白い部分があったので買ってきたのだが、真面目でまともな本のようである。
 巻頭に、「若者ほどインターネットを知らない?」というのがあって、えっ!と思ったのだが、なかなか説得的である。いわれていることは、2003年ごろから購入した端末を最初からネット接続して使うことが当たり前になり、電源を入れればそのままネットに接続されるようになっている。そういう端末しか知らない若者は、インターネットが「公共社会」であることを知らないのではないか? 都市で暮らすものが電気やガスや水道がどのようにして自分につながっているかなどを考えることもしないように、若い世代にはネットはあって当たり前のことであって、ほとんど空気や水のようなもので、つながっている先は自分で選んだ仲間だけで、内輪のネットワークだと思っていて、「公共社会につながっている」というネットの怖さが想像できないのではないのか、と。彼らにとってネットはLINEやツイッターで仲間とつながるためだけの手段である。そうでなければコンビニの店員が店内のアイスクリーム用冷蔵庫の中で寝そべって「涼しい〜」などとやっている写真をネット上に晒すだろうか、と。
 といって著者はそれをただ否定的にみているのではない。SNSにはもっといろいろな可能性があるのだぞ、ということを縷々紹介している。