今日入手した本
- 作者: 関川夏央
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/05/28
- メディア: 単行本
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前の「「解説」する文学」が面白かったので入手した。関川氏はほぼわたくしと同年配のかたで、生きてきた時代がほぼ重なっているためか、ここに書かれていることの多くに違和を感じない。
わたくしがここにだらだらと書いていることは、「備忘」であり「感想」であるが、関川氏のしているのは「解説」である。そこには芸があり、芸によりわたくしの贅言ではその周辺しか言えないことが簡にして要を得て述べられる。例えば、
日本人は維新以後、旧時代のモラルを捨てた。あるいは捨てようと必死の努力をした。しかし新しいモラルは見つからなかった。それは外国からもたらされるという種類のものではない以上、当然である。
それでも人はなんからのモラルによらなくては生きられないから、たとえば、「正直」という旧時代のモラルを、自分の内面をさらけ出すあられもない率直さまたは露悪で代替しようとした。いわば自意識の安定のために不安定な状態を意図してつくりだしたのであり、そのようにして自然主義小説は生まれ、やがて私小説へと結晶した。
しかし、内面などというものはあるといえばあるし、ないといえばそうともいえる。少なくとも相対的なものにすぎない。また内面の物語は、しばしば独善とミニマリズムの陥穽にはまり、読者をもとめつつ拒むといった矛盾をはらむ。
これは山田風太郎の作品群が「日本近代文芸そのものへのもっとも強力な批評になっている」ことを述べた一節。「読者をもとめつつ拒む」という短い文言で、実に多くのことを言っている。
また内田樹氏を評して、「どんな仕事であれ打込む人なのである。努力することがビョーキのように好きな人である」と述べているのも、まったく同感。そしてある時期の日本には「努力することがビョーキのように好きな人」があちこちにいて、それが日本を支えたのだろうなと思う。
人類5万年 文明の興亡(上): なせ西洋が世界を支配しているのか (単行本)
- 作者: イアンモリス,Ian Morris,北川知子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/03/19
- メディア: 単行本
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わたくしは昭和22年生まれで、世界≒西欧という意識で生きてきたように思う。最初に行き当たった思想家である福田恆存からは、世界が西欧化していくなかでも、それぞれの地域が持つ西欧化しない核のような部分という見方を教わったし、そのあと吉田健一からは、明治にわれわれが接した西洋は西洋が劣化していた時代の西洋であり本当の西洋ではないという見方をおそわった。どちらにしても意識の対象は西洋であった。最近、西欧の世界制覇といわれるものの(そして民主主義のような西欧が世界普遍的と思っているような思潮にしても)、そろそろ賞味期限が過ぎてきているのかもしれないなと感じることもあり、新聞で紹介されていた本書を入手してみた。J・ダイアモンドとも違う視点の本らしい。