今日入手した本

身体巡礼: ドイツ・オーストリア・チェコ編

身体巡礼: ドイツ・オーストリア・チェコ編

 養老さんが「考える人」に連載しているものをまとめたもの。ヨーロッパのお墓などをみてあるく話。まだ続編もでるらしい。物好きで「考える人」は一応ずっと購入しているので、ちらちらとは読んでいたのだが、本屋で立ち読みしていたら、「ウィーンと治療ニヒリズム」という章があったので買うことにした。
 最近、近藤誠さんが(2回目の?)ブームになっているが、近藤さんがいっていることは治療ニヒリズムの一種なのであろう。治療ニヒリズムというのは医療行為は患者さんを益するよりも害をあたえることのほうが多いから、多くの場合は、何もしないほうがいいという方向の論であろうかと思う。何しろ外科手術とか抗がん剤投与とかは患者さんを害する行為なのであるから、その害をうわまわる益があるのでなければ、しないほうがいいのは明らかである。ヒポクラテスがいっていたのもそういう話で、医療の歴史において伝統ある見解である。そして医療の歴史の多くにおいて、医療行為はしないほうがいいことの方が多かったのだから、医療の本道の見解でもあるのかもしれない。
 この本をちらっと読んだかぎりでは、治療ニヒリズムというのは必ずしもそういう方向ではなく、自然志向の医療、現在でいえば自然食品志向で、自然治癒力にたよるといようなことらしい。養老さんの話はそこから都市の問題、都市化、意識化といういつもの方向にいくのであるが、本書をパラパラと読んでいて一番面白かったのが、最近読んで、なんともいえない違和感を感じた戸田山和久氏の「哲学入門」への違和感のよってくるところをいろいろと教えられたことである。たとえば、「メンデルの最大の功績は「生物を情報として見る」基礎を確立したこと」とか、「生気論は情報は物理化学的には説明できないぞという話」であるとか、「物理学で墓石は説明できない」とか・・。
 写真が多く、美しい本である。本文150頁ほどで、もう半分ほど読んでしまった。