今日入手した本  「過剰診断」

過剰診断: 健康診断があなたを病気にする (単行本)

過剰診断: 健康診断があなたを病気にする (単行本)

 
 この前の日曜の朝日新聞の読書欄で紹介されていた本。
 病気を早期に(症状がまだなにもない時に)診断しようとすることは決していいことばかりではないということを述べた本。
 まだ半分ほどしか読んでいないが、高血圧、脂質の異常、糖尿病、前立腺癌や甲状腺癌などについて著者が述べていることはほとんど首肯できるものばかりであるように思う。
 しかし、100人治療をして一人にしか有効でない治療を無意味とみるかそれでも意味があると考えるかは科学の範疇をこえていて、個々人の価値観に帰着してしまうところが大きいと思う。つまり各人の人生はそれぞれに一回しかあたえられていないし、治療した自分としていない自分を同時に経験することもできず、そしてなにより未来のことは誰にもわからないからである。
 一部、近藤誠氏の論とかぶることろがあるようにみえるが、近藤氏は基本的にがんは治らないものとしているのに対して、著者は「がんもどき」は放置していい(放置すべきである)が、がんは治療すべき闘うべき病気としている。ただ治療すべきがんと「がんもどき」が病理学的にも区別できないとすると、見つけたものが90%は「がんもどき」だが10%は「本物のがん」であるのだと統計的に推定されるような場合に、それを放置していいのか治療すべきなのか、これは科学あるいは医学からは結論がだせないことである。ただ現在の医療がそれをほとんど無条件で治療すべきとしていることはおかしいと著者がしていることは、まったくその通りであると思う。
 現代は健康志向が過熱している時代で、「健康になれるのであれば死んでもいい」といった倒錯した健康志向がひろがっている。そして医療機関にくるひとの多くがそういうひとなのである。そういうひとにこの本を読んでもらってもまずぴんとこないだろうと思う。そういうひとは1%でもあるいは0.1%でも健康になれるならできることは何でもしたいと意欲に満ちているのである。