森本あんり「反知性主義」

- 作者: 森本あんり
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/02/20
- メディア: 単行本
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副題が「アメリカが生んだ「熱病」の正体」で、「この国と文化のもつ率直さや素朴さや浅薄さ」を理解するためにはアメリカにおけるキリスト教の土着化の過程を知らねばならないと森本氏はいう。
わたくしはアメリカの食わず嫌い、知らず嫌いで、そうなったのは若い時に吉田健一にいかれたことによる。何しろ吉田さんというひと、そういえば世界地図のどこかにアメリカという国もあるようですな。ニューヨークにいったときにいい飲み屋さんがあったから、まんざら捨てた国でもないかもしれないね、というような、「アメリカの存在を黙認する」(確か、丸谷才一さんか山崎正和さんの言葉)姿勢のとんでもない人だったので、それに倣ってわたくしもアメリカって永遠に若い野蛮の国として、無関心を決め込んできた。なにしろ「率直さ」も「素朴」も「浅薄」も吉田健一推奨の「文明」の対極にあるものである。
もう一つはデネットが「解明される宗教」(原題は「呪縛を解く」)のような本を書き、「これは何よりもアメリカ人の読者に向けられている」「アメリカ人ではない読者は、この本からアメリカが置かれている状況について、何かを学んでほしいと思う」「アメリカは、宗教に対する態度という点で、世界の主要な国々とは著しく異なっている」と書くような、あるいは森本氏が「進化論を拒否する「創造主義」」というように、進化論を拒否して生物学がなりたつわけがないと思うのに、平気で進化論否定がいわれる信じられない国というのがわたくしのアメリカのイメージであった。そのアメリカの典型が禁煙運動である、と。まあ、禁煙運動のよってきたるところもふくめ少しはアメリカについて知っておいたほうがいいかなと思い、買ってきた。
中井久夫「戦争と平和 ある観察」

- 作者: 中井久夫
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2015/08/06
- メディア: 単行本
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東大本郷の学食の前あたりの立て看が林立しているところで、精神科の入院患者さんがマイクをもってアジ演説をしていた光景をいまだに覚えている。これは患者さんの自発性の表れで回復の兆候なのであるというような説明をきいた。反=精神医学という動向は理由も根拠もあっておきてきたものだと思うが、それが矮小化されるとこうなってしまうわけである。もちろん、反=精神医学というような動向も後から知ったのだが・・。
B・エーレンライク D・イングリッシュ「魔女・産婆・看護婦」

- 作者: バーバラエーレンライク,ディアドリーイングリッシュ,Barbara Ehrenreich,Deirdre English,長瀬久子
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2015/09/10
- メディア: 単行本
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フェミニズムにとって看護というのは躓きの石ではないかと昔から思っている。この帯にあるのもある意味でイリイチのいう「シャドーワーク」の問題である。家庭などで女の当然の仕事と思われてきたことが女であるが故に無償で当然とされていたのであろうか?という問いである。イリイチも一時フェミニズム陣営から同志として迎えられ、やがて反動として排除されていった。上野千鶴子さんも「介護という女が無償でおこなって当然とされてきた行為が、国家によって有償の行為であると認定されてきた。なんという素晴らしいこと!」というようなことをいう。しかし看護師は資格職なのである。看護協会は看護というのがいかに専門的で高度の知識と能力がなければできないものであるかをいつも強調するが、その由来をたどると母親が子供に、あるいは子が老親にしていたことにたどりつくので、その専門性ということの根拠がつねに曖昧になる。本書もまだ読んでいないが、フェミニズムに味方するものなのか、敵対するものなのか微妙なところがあるのではないかと思う。
D・E・リーバーマン「人体 600万年史」

- 作者: ダニエル・E・リーバーマン,塩原通緒
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/09/18
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書名をみて買ったのでまだ全然読んでいないが、文明化が健康にあたえるさまざまな影響を論じたもののようである。メタボなどというのが病気としてでてくるということ自体が、大部分の歴史でひたすら飢餓が問題であった人間としてはありえないことなのである。