日本文学全集25 須賀敦子

 須賀氏の本はかなりもっているが、こうして一冊になっていると便利ということもあって買った。
 池澤夏樹氏の(解説の)「付録」の「詩の悦楽について」から。「詩についてのヨーロッパ的な常識・・詩というものが文学全体、ないし人々の知的生活全体に占める位置が、日本とヨーロッパでは随分とちがう・・日本では詩のほうはあまり読まれないし、話題になることも少ない。・・」「詩というものに対する日本人の関心はずいぶん薄い。・・まともな大人が楽しんで読むものからは遥かに遠いという印象。」
 日本の詩であった和歌や俳句は耳で聴かれるものというより目で読むものであったというような気がする。日本語の音韻は母音も少なく、音律的な工夫、響きの工夫が難しい。それで耳で楽しむ詩ではなく、頭で考えるような詩が現代では書かれ、ほとんど読者を持たない。耳で聴いただけでは区別できない同音異義語がたくさんあって、おのずから目でみることによってはじめて理解できるという不利を日本語は抱えているのではないかと思う。