E・トッド「グローバリズム以後」
グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命 (朝日新書)
- 作者: エマニュエル・トッド
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: 新書
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最初にトッドが前文を書いているが、氏の基本的な視点は、1998年から2016年のあいだに、グローバリゼーションが国を乗り越えるという思想的な夢が絶頂に上り詰めて墜落していったのだというもののようである。
1998年に情報革命が世界を縮めると思われた。しかし、それは墜落した、と。一番の問題はエリートの信用が失墜したことである、と。
欧州が混乱するなかでロシアは回復しはじめている。
日本は安定しているが、老いつつある。
前書きの最後に自分の方法の間違いということに言及している。アナール派の出自をもつ自分は、大衆、ふつうのひとたちに関心をよせてきた。しかしそれゆえに統治するもの、指導者たち、エリートたちに十分に関心をはらわず、その能力、知性や責任感、道徳性などを過大評価してしまった、と。フランスの指導者はユーロを壊すくらいなら、フランス社会の一部を壊したほうがましだ、と思っているのだ、と。エリートに十分な関心をはらわず、しっかりとした研究をおこなってこなかったために、自分は人間性について楽観的になりすぎていた、と。
エリートという範囲にトッド自身がはいるのか否かであるが、わたくしにはエリートと知識人というのが一部重なるところがあって、トッドは間違いなく知識人である。そして知識人の言葉というのが世の中をどのくらい動かす力があるのかというのが問題である。知識人は後からおきたことを説明するだけで、何かを起こす力はもっていないのではないか? トッドはソ連の崩壊を予言したが、ソ連を崩壊させたわけではない。おそらくトッドの書くものを読むのは知識人あるいは一部のエリートではあって、大衆あるいは普通の人ではない。そうだとするとトッドは何のために書いているのか? 何かを理解できる説明できるということの喜びからなのだろうか?