岩田健太郎「新型コロナウイルスの真実」(3)

第二章「あなたができる感染症対策のイロハ」
 主な感染経路は二つ。飛沫感染接触感染。飛沫感染は患者がくしゃみとか咳をしたときに生じる水しぶきによって生じる感染。飛距離は2mくらい。接触感染は、患者から飛んだ飛沫が何かの表面につき、そこに別の人が触ることから生じる感染。
 「空気感染」はほぼ生じないと考えられている。
 感染経路をブロックできない感染症への対策はワクチンのみである。
 飛沫感染予防の最善手は患者の隔離。そして手指の消毒。
エレベーターのボタンやドアノブを何分おきに消毒すべきかなど、議論をし出したらきりがない。それであれば、手指消毒を徹底するほうがいい。
 免疫力を有意にあげることが可能な方法はワクチン接種だけである。
 マスクは自分に症状がないのであればつける意味はない。
 要するに、手洗いの徹底、何か自分に症状がでたら家にいること。風邪をひいたら自宅で休み、会社や学校にはいかない。
 ゼロリスクは求めない。われわれが希求すべきなのは、「より低いリスク」である。
 ゼロリスクを求めるなら、家からあるいは部屋から一歩もでないことであるが、それはそれで病的で不健康な状態である。

 多分、この章で一番問題なのは、無症状のひとはマスクをつける意味はないという部分であるかと思う。このウイルスに感染しても何ら症状がなく経過するひとは多いらしい。そのひとが、それでも他への感染源となることはないかということである。まったくゼロとはいえないがそのリスクはきわめて低いというのが岩田氏の見解なのであろうと思う。しかしまったくゼロではないのであれば、やはりマスクはしたほうがいいのではという見解もあるのではないかと思う。
 日本だけではなく、世界のいろいろなところの報道を見てもマスク着用者はきわめて多い。昨今の日本ではマスクを着用していないひとはそれだけで目立つくらいである。わたくしもまた目立ちたくないから外出時にはマスクをしている。
 そういうほとんど意味のないことであっても、巨大な数になれば、ある程度は感染拡大を防いでいるということはあるのだろうか?
 風邪をひいたら仕事や学校を休めという部分もおそらく問題である。風邪をひいても仕事や学校を休まないという従来の日本の風土はおかしいとして岩田氏はこの主張をしているのであろう。単に感染予防ということであれば、現在の在宅勤務推奨の環境下ではむしろ在宅での勤務は可能ということになるのかもしれない。
 わたくしの産業医としての経験からいえば、風邪で休むひとは、また喘息の発作で休み頭痛で休み、生理痛で休むのである。なんだかんだとその積算として月の半分も欠勤するひとがいる。風邪をひいたら休むというのはその人の仕事への姿勢を何らか反映している部分があるようにわたくしのような旧弊な人間は感じてしまう。そう感じるのは旧来からの日本の《24時間働けますか的風🉇》に毒されているということなのだろうが・・・。
 ということで、次章の「ダイヤモンド・プリンセスで起こっていたこと」以下が岩田氏の本書で述べたかったことの核心であり、今度のコロナウイルス感染で露呈されてきた日本が抱える様々な問題点についての岩田氏の指摘とそれへの見解をこれからみていくことになる。
 そうすると、狭い意味での臨床からは離れることになるので、稿をあらためたほうがいいと思う。

新型コロナウイルスの真実 (ベスト新書)

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