老人の国

 最近の新聞の記事は本当につまらないので、もうとる意味はないようにも思うのだが、それでも取り続けているのは出版広告をみるためということが大きいような気がしている。そしてそれをみると、最近出版される本は老人を対象にしたものがとても多い。今日の広告では、養老孟司「養老先生、再び病院へ行く」、和田秀樹「90歳の幸福論」、田村セツコ「85歳のひとり暮らし」、曽野綾子「九十歳」、みつはしちかこ「小さなひとり暮らしのものがたり」、牧野富太郎「好きを生きる」・・
 本日は土曜日で朝日新聞の「読書欄」の日なのだが、そもそも今の若いかたは新聞もとらず、本も読まないのだから、どうしても取り上げる本がそういう本に傾くのもやむを得ないのかもしれない。
 高齢化というのは数字であり量の問題である。しかし量の問題ではなく質こそが大事ということになってきたことで「90歳の幸福論」というような本が書かれるようになったのであろう。
 しかし自分の人生を自分で操作できるというのは養老さんがいう典型的な「都市化」の論理であって、わたくしは現在の日本の長寿化の原因は個々人の努力の結果ではなく、栄養状態の改善と、日本が世界のなかでは生きることのストレスが少ない国、生きることのための闘争を強いられることが少ない国であるためではないかと思っている。自分の周囲にいる人はすべて自分の競争相手と考えている日本人はそうは多くはないのではないか?
 量の問題は達成しつつある。しかし、質の問題は?
 ところで、今日の広告では4月に村上春樹の「街とその不確かな壁」という長編が刊行されるらしい。最近の村上さんはあまり調子がよくないので、これも面白いかどうかわからないが、それでも買うだろうと思う。
 ところで、村上さんはわたくしより2歳年下だからもうすぐ後期高齢者である。だれでも平等に歳をとっていく。