関白宣言
さだまさしに「関白宣言」という歌がある。結婚を前にした男が婚約者を前に、おれは関白な亭主になるから覚悟をしておけと宣言するといった内容の歌である。
黙って俺について来いとか、つまらぬ嫉妬はするなとか、お前は家をすてて俺のところに来るのだから帰るところはないと思えとか、言いたい放題なのだが、後半段々弱気になってきて、俺より先に死んではいけないとか、俺が死んだら涙をこぼせとか、言って、俺が愛する女は生涯お前ただ一人といって終わる。
この歌は1979年の発売らしい。45年ほど前だからわたくしが30歳過ぎた辺りである。
当時、この歌は女性団体などから女性差別の歌であるとか男尊女卑の歌であるとか非難されることもあったようだが、少し聴けばわかるように、これはいずれ女房の軍門に下ることになる自分の未来が見えた男の虚勢、悪あがきであり、それをきいて、未来の奥さんは、男って馬鹿ねと思いながらペロッと舌を出しているに違いないのである。
わたくしは、この歌から数年して大学での研究生活を終えて企業立の病院に就職したのだが、その時にはすでに給与は銀行振り込みだったと思う。数年前からそうなっていたらしい。先輩いわく「銀行振り込みが諸悪の根源である。給料袋を受け取っていた時には、それを女房に手渡す時だけでも亭主に権威があった。ボーナスの時など給与袋が立ったこともあった。それが今では単なる数字だけ。情けない。」
本当かどうか、アメリカでは財布は亭主が管理していて、奥さんは必要が生じるたびにご主人にその費用を請求し、ご主人がそれを認めればそれを受け取るのだそうである。
今日の朝刊に、さだまさしの歌の全集の宣伝が載っていたのをみてこの歌を思い出した。