G・クライツァー 「デブの帝国 いかにしてアメリカは肥満大国となったのか」

   [バジリコ 2003年6月25日初版]


 ほとんど世界一の肥満大国であるアメリカ人の肥満の話。
 この本を読んでいくつか知ってびっくりしたことがあるが、まずその一つがアメリカにおいて、基本的に肥満は貧困層、貧しい労働者層の問題であるということであった。肥満が貧困層の問題であるという点にアメリカの現代社会の問題が露呈している。

 1971年に日本の科学者が高果糖コーンシロップの生産法を発見した。これにより安価に甘いものを生産できるようになった。コカコーラもペプシもこれを使って甘味料のコストを下げることにより、徳用サイズを売っても利益がでるようにすることができた。
 一方、油脂の世界では、椰子からつくるパーム油が席捲した。マクドナルドではヴァリューセットができた。
 アメリカ人の外食の割合はどんどんと増えていった。
 2000年において、アメリカ全体でBMIが30をこえる人の割合は約20%、州によっては25%近くである。

 要するに貧困といっても、安いものをたくさん買える程度の貧困なのであって、途上国のような栄養自体を摂取できないというような貧困ではない。テレビ・ディナーというテレビを食事しながら見るための出来合いの食事をとりながらテレビを見るのが楽しみというようなのが平均的なアメリカ人の生活となっている。
 日本も将来はこのようになっていくのであろうか?
 しかし、スナック菓子を食べ、コーラとフライド・ポテトをたらふく食べて肥っていくのは悲惨であるとしても、本当に美味しいものを食べて肥ることもまた悲惨なのであろうか?、というようなことを、美食が好きで肥満に苦労したヒュームの肖像画を見ながら考えた。アメリカは食生活をふむめた文化面で貧しいことがその極端な肥満を生んでいるのだというような見方は偏見なのであろうか?