今日入手した本

医者は現場でどう考えるか

医者は現場でどう考えるか

 原著の題名は「How Doctors Think 」で、実はもっている。なんで購入したのか覚えていないが、何かの本で引用されていたのではないかと思う。例によって英語がおっくうになって、ちょっと読んだだけで抛ってあった。たまたま書店にあった。やはり日本語だとわかりやすい。翻訳もとても読みやすい。タイトルだけみると、多くの医者に共通する思考法を論じているようであるが、実はそうではなく、最近流行のマニュアル式診断法というか、EBMのような行きかたを批判した本のようで、印象としてはベナーの「看護論」のような方向のような気もする。
 
ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ

ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ

 上野千鶴子さんの本だからなあ、と思ったが一応買ってきた。上野さんは介護保険の成立ということを非常に重くみているらしい。その成立によって今まで無償の行為であるとされていたものが有償化され、「不払い労働」が「賃労働」となったということである。しかしその中でもいまだその賃金がきわめて低い水準に抑えられていることは「ジェンダー・バイアス」によるというようなことから、それがフェミニズムの問題につながっていく構図になるらしい。「ケア」という言葉がキー・ワードになるらしいが、上野氏はそれが主として今までは「育児」の意味に限定されてきたが、それを育児・介護・介助・看護・配慮などの上位概念に拡張に拡張するっことで、育児や家事などに典型的な「不払い労働」の問題に理論的にせまっていくことができるとしている。わたくしなどはケアとは「世話をする」ということであって、狭くは「看護・介護」のことではないかと思っているのだが(育児も世話の一種で、その拡張が看護・介護なのではないだろうか?)、医療の場にいるための思い込みなのであろうか? わたくしは今まで上野氏一般向けのの本は読んだことがあるが、「家父長制と資本制」といった学術書は読んでいない。これはどうも学術書に近い体裁であるようで、ずいぶんと理屈っぽい本のようである。ちらちら見ると「ポスト・モダン」だなあという気がする。自分の立場は「徹底的に文脈依存的で社会的なもの」である、といっている。「徹底的に文脈依存的で社会的なもの」というは言説にはなっても学問にはならないのではないかなあという気がする。学問ではなく言い合いと罵り合いになってしまうのではないだろうか? 上野さんというひとはどの学問分野にしても指導者的にならないと気がすまないひとのようで、喧嘩が好きなひとのようである。
  医療系のさまざまな雑誌などに発表された論文を集めたもののようで、事実の提示、現状の提示を主たる目的としていて、声高な主張をしたものではないようである。現在の医療の現場における最大の問題の一つでありながら(特に日本では?)直視されてこなかった問題をとりあげたという点で貴重な本なのであろう。上野氏の本の(きわめて観念的な?本の)解毒剤になるのかもしれない。