今日入手した本

 「結びにかえて」に「このわたしにしてからが、まさか文藝春秋から本を出すとは思いもよりませんでした」などとぬけぬけと書いている。
 まだほとんど読んでいないけれど、かなり苦い本のようで、果たしてファミニズムというのは功罪どちらが大きかったのかという反省のようなものが(本気かどうかはわからないが)書いてあるようである。どうも自分たちよりも敵のほうが上手だったんだなあとでもいうような。しかし、「日本が泥船なら、さとい小動物がまっさきに舟から逃げ出すように、あなたがたも逃げたらよい。泥船といっしょに沈没するのは船長だけでだくさん。あなたたちに責任はない。国なんてその程度のもの。それより、世界中どこでもいいから、生き延びていってほしい。どんなやりかたでもいいから、世界のどこかで、元気でいてほしい」などと書いている。そんなことができる人がどのくらいいるのだろう。それに日本が泥船なら、日本以外は泥船でないのだろうか? やはり上野氏というのは頭の人だなあと思う。
 
戦争する脳―破局への病理 (平凡社新書)

戦争する脳―破局への病理 (平凡社新書)

 同じ著者の「現代精神医学批判」が面白かったので買ってきた。まだ斜め読みしただけだけれども面白い。やはりこういう変な人というのは好きだなあと思う。とんでもなくいろいろな本を読んでいるひとである。このひとの本にはどこかに吉田健一がでてくることが多い。本書もまた。要するに吉田健一というひとは現代においてもまともな精神で生きるにはどうしたらいいかを示した人だったのだ、と。氏は書く。「今、再び国が破れたら、その時帰る山河はありや、である。/ 国の肉体は国土であろう。日本の海山河、山紫水明白砂青松を復活させることに経済政策の全てを傾けてはいかがか。その道は戦争にも地球破滅にもつながらないように、私には見える。」 これまた実現するはずのない夢想であるが、日本脱出の奨めよりはまともであるような気がする。
 
 こんなに本を買い込んでいったいいつ読むというのだろう。とはいえ、明日から一週間夏休み。