今日入手した本 丸谷才一全集 第7巻

 

 
 この巻は、1.日本文学史早わかり 2.後鳥羽院 3.王朝和歌の系譜 の三本柱で構成されていて、「日本文学史早わかり」も「後鳥羽院」も持っているし、王朝和歌は例の話ねと思って、購入していなかった。最近何かで「津田左右吉に逆らつて」が本巻に収められていることを知って、?と思って本屋で手にとってみた。「津田左右吉・・」は3.の「王朝和歌の系譜」にはいっていた。「津田左右吉・・」と王朝和歌? まあ関係あるといえばある、津田左右吉は王朝和歌を否定した。その津田左右吉を批判したのが丸谷氏の論であるから、ぐるっとまわって関係はしてくる。
 わたくしは丸谷氏の作を三つ挙げるとすれば、「梨のつぶて」「後鳥羽院」「笹まくら」かと思っている。「津田左右吉・・」は後から見れば、吉田健一の「ヨオロツパの世紀末」の主題をそれに先んじて明瞭に提示していたものであるが(その末尾「今日の日本の乱雑と衰退は、アメリカニズムのせいではなく、むしろ西欧十九世紀化の究極の到達点なのである。十九世紀ヨーロッパの価値ではない、もつと普遍的な価値を、ぼくたちの文明は求めなければならない。」)、本屋でこの巻の解説、三浦雅士氏の「文学史とは何か」を読んでいたら、とても面白く、それで買ってきてしまった。この解説、ちょっと異常なもので、丸谷氏の著作集の解説でありながら、過半が吉田健一折口信夫の関係の議論にあてられているのである。
 吉田健一の「文学の楽しみ」の一節に「英国の大学でも、折口信夫を英国人にしたようなのがいつまでも、どこにでもいた訳ではなく」というのがあり、何でここに折口信夫がでてくるのかが理解できなかった。吉田健一国学者の結びつきが想像できなかったのである。三浦氏の解説を読んで、そこのところがようやく腑に落ちるようになった。
 しかし主に解説を読むだけのために高価な全集本を買ってくるというものどうかと思う。すでに一部では刊行されてきているようであるが、こういう全集の解説と月報だけを収載した本を刊行することはできないものだろうか? そんなものを買う酔狂なひとはまずいないだろうか?