橋本治 文 岡田嘉夫 絵 「仮名手本忠臣蔵」

   ポプラ社 2003年10月


 わたしの知識にはあちらこちらに大穴が空いているが、日本の古典もその一つである(西欧の古典ももちろんだけど)。
 それで、歌舞伎などというのも全然しらない世界である。
 橋本もいうように「仮名手本忠臣蔵」も名のみ高くて、どんな話かしらないことになる。まあさすがに吉良上野介浅野内匠頭がでてくるとは思ってはいなかったけれど、高師直や塩冶判官は知っていても桃井若狭之助とか顔世御前とか加古川本蔵は知らなかったし、お軽勘平も名前だけ。
 そうかこんな話だったんだ、というのが感想であるが、つくづく日本には超越的なものがないのだと思った。
 筋を動かすのは、男の邪恋だったり、忠義だったりで、すべて人間関係にかかわることばかりである。
 ところで、日本を理解するためには戦国時代以降がわかれば十分という説があったけれども、江戸の話を室町幕府の鎌倉にもっていくという設定はどんなものなのだろうか? もちろん、江戸を舞台にはできない事情からではあろうが、室町時代ってあんな時代ではないよな、という気はする。