渚にて

 確かわたくしが中学に入ったばかりに上映されたアメリカ映画である。調べてみると1959年に上映とあった。白黒映画という今ではまずない、印象としてはとても地味な映画だった。
 内容は東西冷戦下、第三次世界大戦が勃発し、核弾頭の打ち合いで北半球は壊滅、南半球ではわずかに生き残っている者がいるが、それも北からの汚染の拡大でいずれは北半球と同じ運命を辿ることは避けられないという状況で、潜水艦に乗っていたため?生き延びた数名の行動を描いたものである。
 阿鼻叫喚といった場面はなく、恋愛場面もあったらしいが中学生のわたくしにはピンと来なかったようで、まったく記憶にない。
 唯一覚えているのが、人類が死滅したはずの北半球から、モールス信号が送られてきて、調べにいくと、無人の信号所の発信機がカーテンが風に煽られて打腱器に当たり、時々意味のない発信をしていたことがわかる場面である。

 ネットで調べてみたら、原題の on the beach はエリオットの詩「虚ろな人々」のⅣにある gathered on this beach of the tumid river に由来するらしい。
 その末尾は「これでこの世はお終いだ バーンと終わらぬ めそめそと」である。This is the way the world ends not with bang but a whimper.

 しかし映画の人物は毅然としていたように思う。