2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

[吉田健一の50の言葉(5)酒

本当を言ふと、酒飲みといふのはいつまでも酒が飲んでゐたいものなので、終電の時間だから止めるとか、原稿を書かなければならないから止めるなどといふのは決して本心ではない。理想は、朝から飲み始めて翌朝まで飲み続けることなのだ、といふのが常識で、…

(4)自然

この詩(シェイクスピアのソネット第18番)には、漸く沈み掛けてゐて、いつかは沈むとも見えない太陽の豊かな光線が空中に金粉を舞はせてゐる英国の夏の黄昏がある。我々は東洋に生れて、かういふ濃厚であると同時に自然のまま美しい現実を、西洋の詩や音…

考える人 2016年冬号

考える人 2016年 02 月号出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/12/28メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る 今回の特集が「病とともに生きる」であるから買ったわけではなく、一応「考える人」のバックナンバーは揃えている(一冊買い損ねて欠巻…

山田風太郎「昭和前期の青春」

ちくま文庫 2016年1月 2007年に筑摩書房から刊行された「山田風太郎エッセイ集成」の一冊を文庫化したのもの。 中に「気の遠くなる日本人の一流意識」という文がある。そこで山田氏は、日本人の目標は何なのかと問い、明治以来の日本人が示した、よ…

(3)動物

動物はただ生きてゐることを望み、或は生きてゐるのを自然のことと心得てゐるに過ぎない。 「覚書」の「3(ローマ数字)」から。 「覚書」は昭和48年から49年にかけて「ユリイカ」に連載された。44年に「ヨオロツパの世紀末」、45年に「瓦礫の中」…

養老孟司ほか「世につまらない本はない」 山田風太郎「昭和前期の青春」

世につまらない本はない (朝日文庫)作者: 養老孟司,池田清彦,吉岡忍出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2015/12/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る 以前刊行された「バカにならない読書術」の改題加筆修正版なのだそうである。加筆修正…

井上章一「京都ぎらい」 加藤典洋「村上春樹は、むずかしい」

京都ぎらい (朝日新書)作者: 井上章一出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2015/09/11メディア: 新書この商品を含むブログ (43件) を見る 井上章一氏の本は、以前「日本に古代はあったのか」という本について悪口を書いたことがある。何だかこれが京都は東…

(2)神様

一体、我々に西洋風の罪の意識があつてどうなるといふのだらうか。・・西洋人は神の観念や罪の意識の重荷に堪へかねてそれを少しでも堪へ易くする為にその文明を生んだのであり、それならば、この意識や観念は西洋の文明がそこから発したもとの野蛮である。 …

松岡正剛「国家と「私」の行方 西巻」 第11講「アメリカの資本主義と大衆の力」

この上下二巻(東西2巻?)の本をぱらぱらと見ていて、第11講で、たまたまゲーム理論のことがとりあげられているのが目についた。年末に橘玲さんの「「読まなくていい本」の読書案内」でのゲーム理論についての論をみたばかりであったので、それとくらべ…

江國香織他「新しい須賀敦子」 村上龍「ラスト ワルツ」

新しい須賀敦子作者: 江國香織,松家仁之,湯川豊出版社/メーカー: 集英社発売日: 2015/12/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 須賀敦子の本は「ミラノ 霧の風景」をはじめにかなりのものを読んでいると思う。素晴らしい日本語を書くひとと…

(1) 平和

勢古浩爾さんの「ぼくが真実を口にすると 吉本隆明 88語」というのを最近ちょっと読み返していて、そうかこういうやりかたもあるのかと思った。それで、年があたらまるにさいしてこんなことを始めてみようかと思った次第。50というのにもなんの根拠もな…

[吉田健一の50の言葉(5)酒

本当を言ふと、酒飲みといふのはいつまでも酒が飲んでゐたいものなので、終電の時間だから止めるとか、原稿を書かなければならないから止めるなどといふのは決して本心ではない。理想は、朝から飲み始めて翌朝まで飲み続けることなのだ、といふのが常識で、…