2016-01-01から1年間の記事一覧

斎藤環「ひきこもり文化論」

ひきこもり文化論 (ちくま学芸文庫)作者: 斎藤環出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2016/04/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る 十年以上前に刊行された本の文庫化。 斎藤氏のものは「ひきこもり」にかんする本もそれ以外の本も読んでいるが…

渡辺政隆「ダーウインの遺産」 J・ヒース「啓蒙思想 2.0」

ダーウィンの遺産――進化学者の系譜 (岩波現代全書)作者: 渡辺政隆出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2015/11/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る 最新号の「考える人」で紹介されていた本。そこで向井万起男さんが紹介し…

考える人 2016年春号

考える人 2016年 05 月号作者: 鷲田清一,最果タヒ,志村ふくみ,津田大介,アリアナ・ハフィントン,伊勢?賢治,内藤礼,池上高志,鈴木健,森田真生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/04/04メディア: 雑誌この商品を含むブログ (5件) を見る 新潮社の雑誌「考え…

(14)文士は変わっている

それにしても、この文士は変わっているという考えでごまかし、又ごまかされているのは世間の方だけでもないようである。文士自身が、文学者は政治に関心を持たなければならないなどというふざけたことを言っている。文学をやっていると頭が変になって来て、…

藤野英人「投資家が「お金」よりも大切にしていること」海星社新書 2013年

読んでいるときはとても面白かったのだけれども、感想を書いているうちになんとなくすっきりしないものを感じるようになってきた。面白かったのはわたくしがここで指摘されている典型的な日本人の一人と感じるからであろうし、すっきりしないのは、著者があ…

(13) 文明

文明の状態は我々が人を人と思ふといふことに尽きる・・ 「ヨウロツパの世紀末」の第2章から。以下前後の部分も引用してみる。 「例へば我々が古代、或は少くとも十五世紀頃までのメキシコの文明といふ言ひ方に何か納得出来ないものを感じるのはその時代に…

三浦展「下流老人と幸福老人」 藤野英人「投資家が「お金」よりも大切にしていること」

下流老人と幸福老人 資産がなくても幸福な人 資産があっても不幸な人 (光文社新書)作者: 三浦展出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/03/17メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る投資家が「お金」よりも大切にしていること (星海社新書)作者: 藤…

(12)詩

文学を詩と言い換えてもいい位であるのは、一定の言葉数で我々に最も大きな楽しみを与えてくれるのが詩だからである。 「文学の楽み」の第3章「詩と散文」の一節。 随分と長い間、文学というのは小説のことだと思っていた。中学から大学の教養学部あたりま…

C・カレル「すべては1979年から始まった」(3)第3、8、16、19、22章 アフガニスタン

本書によれば、現在のわれわれはアフガニスタンではずっと以前から戦禍の続いているように思いがちだが、1970年代に紛争がはじまるまでは、現在のバリやブータンのようなヒッピーの集う土地の一つだった。 その貧しいアフガニスタンは東西からの援助によ…

(11)英国の青年

英国の青年にとっては全英国が、入場無料の英文化史館であり、引いては全欧州が,完備した西欧文化の博物館なのである。その結果、英国の青年が読書し、散歩に出かけ、食事をしにホテルの食堂に入る時、彼等が瞬間も過去の重量を感じていない時はない。彼等…

J・メイナード=スミス「生物学のすすめ」

生物学のすすめ (ちくま学芸文庫)作者: ジョンメイナード=スミス,John Maynard Smith,木村武二出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2016/02/09メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る 1990年に刊行された本の文庫化らしい。書店で偶然目にしたも…

(10)英語

英語が旨いとか、旨くなるとかいうことは、一般には、ぺらぺら喋れることを意味しているらしい。そういう英語が旨い人間が外国人、或は極端な場合には、やはり英語が旨い日本人を相手に英語を話しているのを見ると、兎に角、ぺらぺら喋っているということが…

C・カレル「すべては1979年から始まった」(2)第2、10、13、18、24章 トウ小平の中国

本書は第2章以降、トウ小平、ヨハネ・パウロ二世、サッチャー首相、ホメイニー師の4人の動向とアフガニスタン情勢が交互に描かれていく。世界で同時に進行していく変化を臨場感をもって描くためであろうが、2、10、13、18、24章はトウ小平をあつ…

(9)T・S・エリオット

エリオツトの作品ほど、読んでゐるうちにこつちで何度も態度を変へたのはない。 集英社版の「吉田健一著作集 補巻二」に収められた「T・S・エリオット」いう文章の書き出しである。この「著作集 補巻二」は非常に詳細な年譜が付されていて、それで買ったの…

 日本文学全集 08 日本霊異記 今昔物語 宇治拾遺物語 発心集

日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)作者: 伊藤比呂美,福永武彦,町田康出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/09/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (22件) を見る 書店で何気なく 町田康訳の「宇治拾遺…

矢吹晋「文化大革命」

文化大革命 (講談社現代新書)作者: 矢吹晋出版社/メーカー: 講談社発売日: 1989/10/17メディア: 新書購入: 1人 クリック: 71回この商品を含むブログ (15件) を見る 今、トウ小平について読んでいる関係で購入してみた。 面白いのはこの本が1989年に書か…

(8)食いしんぼう・又

水もなるべく飲まないように、などという病気にはなりたくないものである。なったら、腹が減ってたまらなくて、喉が渇き、煙草が欲しくても飲めず、映画の試写会の招待状が来ても出かけて行けなくて、どうにも情けない感じがするだろと思う。 「饗宴」という…

N・フィリップソン「デイヴィッド・ヒューム」

デイヴィッド・ヒューム:哲学から歴史へ作者: ニコラス・フィリップソン,永井大輔出版社/メーカー: 白水社発売日: 2016/01/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 書店でたまたま見つけた本。副題の通りで、哲学者としてではなく歴史家として…

C・カリル「すべては1979年から始まった」 草思社 2015年1月 (1)「日本語版によせて」 プロローグ「激しい反動」 第1章「不安の高まり」

エズラ・ヴォーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が刊行されたのが1979年なのだそうである。その頃不況にあえいでいたアメリカに教訓をあたえたいと思ったのだと。シンガポールや台湾や香港、韓国などはすでに日本に学んでいたのだから。 1979…

(7)食いしんぼう

人間は食つてゐなければ死んでしまふのだから・・食ひしんぼうでだけはありたいものである。嫌でもしなければならないことは楽しんでやれた方がいいに決つてゐて、食ふのが人生最大の楽みだといふことになれば、日に少くとも三度は人生最大の楽みが味へる訳…

E・ヴォーゲル「トウ小平」 講談社現代新書

トウ小平 (講談社現代新書)作者: エズラ.F・ヴォーゲル,橋爪大三郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/11/19メディア: 新書この商品を含むブログ (6件) を見る 今読んでいて近々感想をアップする予定のC・カリルの「すべては1979年から始まった」では…

[吉田健一の50の言葉」(6)煙草

何日も煙草がなかつた後で吸ふ煙草程いいものはない。例へば、長い日照りで茶色になつてゐた荒地に雨が降り、草木が緑を取り戻して、小鳥が囀りながら枝からから枝へと飛び廻り、黄菊、白菊が草の中に色を散らすやうなものである。或は、広々と横たはつてゐ…

E・トッド「シャルリとは誰か?」

シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 ((文春新書))作者: エマニュエルトッド,Emmanuel Todd,堀茂樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/01/20メディア: 新書この商品を含むブログ (15件) を見る 今、カリルというひとの「すべては1979年から始…

[吉田健一の50の言葉(5)酒

本当を言ふと、酒飲みといふのはいつまでも酒が飲んでゐたいものなので、終電の時間だから止めるとか、原稿を書かなければならないから止めるなどといふのは決して本心ではない。理想は、朝から飲み始めて翌朝まで飲み続けることなのだ、といふのが常識で、…

(4)自然

この詩(シェイクスピアのソネット第18番)には、漸く沈み掛けてゐて、いつかは沈むとも見えない太陽の豊かな光線が空中に金粉を舞はせてゐる英国の夏の黄昏がある。我々は東洋に生れて、かういふ濃厚であると同時に自然のまま美しい現実を、西洋の詩や音…

考える人 2016年冬号

考える人 2016年 02 月号出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/12/28メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る 今回の特集が「病とともに生きる」であるから買ったわけではなく、一応「考える人」のバックナンバーは揃えている(一冊買い損ねて欠巻…

山田風太郎「昭和前期の青春」

ちくま文庫 2016年1月 2007年に筑摩書房から刊行された「山田風太郎エッセイ集成」の一冊を文庫化したのもの。 中に「気の遠くなる日本人の一流意識」という文がある。そこで山田氏は、日本人の目標は何なのかと問い、明治以来の日本人が示した、よ…

(3)動物

動物はただ生きてゐることを望み、或は生きてゐるのを自然のことと心得てゐるに過ぎない。 「覚書」の「3(ローマ数字)」から。 「覚書」は昭和48年から49年にかけて「ユリイカ」に連載された。44年に「ヨオロツパの世紀末」、45年に「瓦礫の中」…

養老孟司ほか「世につまらない本はない」 山田風太郎「昭和前期の青春」

世につまらない本はない (朝日文庫)作者: 養老孟司,池田清彦,吉岡忍出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2015/12/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る 以前刊行された「バカにならない読書術」の改題加筆修正版なのだそうである。加筆修正…

井上章一「京都ぎらい」 加藤典洋「村上春樹は、むずかしい」

京都ぎらい (朝日新書)作者: 井上章一出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2015/09/11メディア: 新書この商品を含むブログ (43件) を見る 井上章一氏の本は、以前「日本に古代はあったのか」という本について悪口を書いたことがある。何だかこれが京都は東…