2016-01-01から1年間の記事一覧

(19)本

ヨオロツパに、何か解らないことがあったらそれについて一冊の本を書くといいという格言がある。これは本当であるようであってヨオロツパについて今度これを書いているうちに始めて色々なことを知った気がする。 「ヨオロツパの世紀末」の「後記」の続き。 …

「イーヴリン・ウォー傑作短編集」 荒川洋治「過去をもつ人」

イーヴリン・ウォー傑作短篇集 (エクス・リブリス・クラシックス)作者: イーヴリン・ウォー,高儀進出版社/メーカー: 白水社発売日: 2016/07/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る わたくしはどうもウォーのものは吉田健一訳でないと駄目、と…

(18)ヨーロッパ

ヨオロツパは或る意味で我々が最も知らない世界の部分で我々は先ず誤解することでこれに接し、誤解が習熟に取り違えられて既に久しいことに気付いた時にはそれまでヨオロツパを我々が誤解したり習熟したつもりでいたりした原因である世界でヨオロツパが表向…

広岡裕児「EU騒乱」(5)

第4章「別の欧州」 この章と次の章が広岡氏の一番主張したかった部分ではないかと思う。 まず農業の問題が論じられる。EUになるということは物の動きに国境がなくなるということであるから、農産物についても国の外に安いものがあれば、それを輸入すると…

広岡裕児「EU騒乱」(4)

第3章「「共同体」の選択」 この章ではEUの成立過程を論じる。そしてそれが一部知識人と政治家の夢から発して次第に現実のものとなっていく姿が示される。 スタートはフランスのロベール・シューマン外相。1950年5月に外務省の広間での記者会見での…

広岡裕児「EU騒乱」(3)

第2章「EUとギリシャの危険なドラマ」 2012年、アテネの広場で77歳の老人が拳銃自殺した。「自分は高齢でもう抗議活動をすることはできないが、ゴミ箱をあさるようなことをようなことをしないで生きるという威厳ある生き方をまっとうするためにはこ…

広岡裕児「EU騒乱」(2)

序章 EUにはシェンゲン協定というものがある。加盟国内での人の移動を自由にする協定である。EU加盟国では英国とアイルランドがこの協定に参加しておらず、スイス、ノルウェー、アイスランドはEUに加盟していない(この協定のことも、スイス、ノルウェ…

広岡裕児「EU騒乱」(1)

最近の英国のEU離脱などを見て、わからないことばかりであるので、少し勉強しなくてはと思って、たまたま書店で目について買ってきたもの。著者の名前も知らなかったが、長くフランスに住んでいるジャーナリストのかたらしい。主としてフランスから見たE…

湯川豊「丸谷才一を読む」

丸谷才一を読む (朝日選書)作者: 湯川豊出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2016/06/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 「はじめに」に「丸谷才一は、本を読むのは楽しむのが第一、楽しくなければ読むのはやめたほうがいい、といった…

倉橋由美子「最後の祝宴」

最後の祝宴作者: 倉橋由美子出版社/メーカー: 幻戯書房発売日: 2015/05/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 古屋美登里というかたが、倉橋氏の単行本未収録の文を集め、「倉橋由美子全作品」の自作解題「作品ノート」をも併せて収録したも…

山本七平「田中角栄の時代」

田中角栄の時代作者: 山本七平出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2016/06/30メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 以前に『「御時世」の研究」』というタイトルで刊行されたものの改題再刊らしい。 山本氏の本はある程度読んで…

考える人 2016年夏号「特集 谷川俊太郎」

考える人 2016年 08 月号出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/07/04メディア: 雑誌この商品を含むブログ (5件) を見る 尾崎真理子という方を聞き手にした谷川氏のロング・インタヴューがある。読んで「ヤな奴だな」と思う。例えば、佐野洋子さんについて。 …

佐野洋子「ヨーコさんの“言葉” それが何ぼのことだ」

ヨーコさんの“言葉” それが何ぼのことだ作者: 佐野洋子,北村裕花,小宮善彰出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/04/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る NHKテレビに「ヨーコさんの“言葉”」という番組があって、それを…

S・ワインバーグ「科学の発見」 L・ムロデォナウ「人類と科学の400万年史」

科学の発見作者: スティーヴンワインバーグ,大栗博司,Steven Weinberg,赤根洋子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/05/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (15件) を見る ワインバーグはノーベル賞受賞の理論物理学者。「はじめに」で、「西洋を重…

橋本治「福沢諭吉の『学問のすゝめ』」 三島由紀夫「作家論」

福沢諭吉の『学問のすゝめ』作者: 橋本治出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/06/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 治さんがこんな本も書いていた。なんとなく近著「国家を考えてみよう」と同系列の本ではないかと思う。やや後半のあた…

橋本治「国家を考えてみよう」 高島俊男「漢字と日本語」 酒井順子「オリーブの罠」

国家を考えてみよう (ちくまプリマー新書)作者: 橋本治出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2016/06/07メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る 橋本治さんの本は出ればたいてい買うようにしている(ただし小説は苦手、窯変源氏とか双調平家とかもだ…

日本文学全集25 須賀敦子

須賀敦子 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 25)作者: 須賀敦子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/05/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 須賀氏の本はかなりもっているが、こうして一冊になっていると便利ということもあって買っ…

G・テット「サイロ・エフェクト」 坂本光司「日本でいちばん社員のやる気が上がる本」

サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠作者: ジリアンテット,Gillian Tett,土方奈美出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/02/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る日本でいちばん社員のやる気が上がる会社: 家族も喜ぶ福利厚生100 (ちく…

A・メスーディ「文化進化論」

文化進化論:ダーウィン進化論は文化を説明できるか作者: アレックス・メスーディ,竹澤正哲,野中香方子出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2016/02/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (13件) を見る たまたま書店で目にした本。文化といったこと…

M・クンデラ「小説の技法」 日垣隆「脳梗塞日誌」

小説の技法 (岩波文庫)作者: ミラン・クンデラ,西永良成出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2016/05/18メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る このクンデラの本は、以前「小説の精神」として刊行されたものとほぼ同じものらしい。クンデラという…

山田風太郎「わが推理小説零年」 伊藤比呂美「ラニーニャ」

わが推理小説零年 (ちくま文庫)作者: 山田風太郎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2016/05/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る 山田風太郎の公刊された5冊のエッセイ集には収録されなかったエッセイのなかからミステリ関係のエッセイを集…

(17)江戸っ子

鴎外と漱石では作風が非常に違っていて、例えば「坊っちゃん」の主人公のような愉快な人物は鴎外には書けなかった。漱石に出来て、鴎外に出来なかったことがあったのは当り前であるが、それにしても漱石の坊っちゃんは、この二人の作家に見られる性格的な違…

宮崎哲弥 呉智英 「知的唯仏論」

新潮文庫 平成27年12月 2012年に刊行された単行本の文庫化。 呉氏、宮崎氏、ともに何でも知っているひとで、いわゆる知識人である。本書のタイトルからして知識人そのもの。 呉氏は印象では何だか仙人みたいな欲望の枯れたとでもいうか、現世を超越…

(16)日本の小説

小説がつまらないのは、或は少くとも、小説という名前を附けて我々の前に出される大概のものがつまらないのは、これも書いている方で、自分は小説を書いているんだという高級な気持ちがあるからではないだろうか。 随筆集「甘酸っぱい味」の「日本の小説」の…

「自選 大岡信詩集」

自選 大岡信詩集 (岩波文庫)作者: 大岡信出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2016/04/16メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る わたくしにとって大岡信という人は、まず第一に吉田健一に「ヨオロツパの世紀末」を書かせた人である。清水康雄氏が「…

岡田暁生「恋愛哲学者モーツァルト」

恋愛哲学者モーツァルト (新潮選書)作者: 岡田暁生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/03メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 28回この商品を含むブログ (20件) を見る 先日入手した「ポストモダンを超えて」で、三浦雅士氏がこの本を絶賛していたので読…

(15)ベートーベン

つまり、こういう人間はいつもひどく鹿爪らしい顔をして暮らしていて、人間はそうするのが普通なのだと考えているに違いない。小人閑居して渋面を作るのである。だから、髪を風に吹かせて、おでこの下が眼だけになっているベートーベンの肖像が大変受けるの…

W・サローヤン「僕の名はアラム」

僕の名はアラム (新潮文庫)作者: ウィリアムサローヤン,William Saroyan,柴田元幸出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/03/27メディア: 文庫この商品を含むブログ (13件) を見る 村上春樹&柴田元幸のコンビの企画で、昔文庫にあったがいつの間にか消えてし…

三浦雅士編「ポストモダンを超えて」 平凡社 2016年3月

ポストモダンを超えて: 21世紀の芸術と社会を考える作者: 三浦雅士出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2016/03/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る タイトルと参加者の中に片山杜秀氏の名前があったので買ってきた。片山氏の書くものや言うこ…

ダーウィン「種の起源」 ヴォルテール「カンディード」 渡辺政隆「ダーウインの夢」

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)作者: チャールズダーウィン,Charles Darwin,渡辺政隆出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/09/20メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 119回この商品を含むブログ (34件) を見る 今まで何回か読み出して挫折しているので…