ウェブ進化論

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」 拾遺

《KINDLE》 坂東慶太さんのトラックバックで、KINDLE というアマゾンから発売(但しアメリカで)された一種のe-book reader を知った。新しいもの好きでおっちょこちょいだから日本語版がでたら買ってしまうかもしれない。 これにかんする記事をみていて感じ…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」(10)コミットすること

ほぼ2年前「ウェブ進化論」を読んだときは、なにもかもがはじめてきく話ばかりであった。Web 2.0 もロングテールもオープンソースもはじめて聞く話であったし、グーグルがなにを目指しているのかもはじめて知った。さすがにブログという言葉はきいたこと…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」(9)吉田健一「埋れ木」

梅田氏の「ウェブ時代をゆく」を読んで、思いだした本、連想した本をとりあげ、それとの関係から梅田氏の本の占める位置をマッピングするのも、そろそろ種切れである。グーグルのしようとしていることは情報の関連づけであろう。情報相互の位置関係を測定し…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」(8)飯を食うこと

仕事については二つの見方があると思う。自分のためのものという見方と、仕事は他人のためのものという見方である。自分のためという見方も、仕事の中でこそ自分が生かせるという方向と、自分がとにかくも食べて生きていくという方向にさらにわかれる。「ウ…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」(7)「うなぎくん」

「うなぎくん」というのは、内田樹氏の「村上春樹にご用心」に紹介されている柴田元幸氏のインタビューでの村上春樹氏の発言のなかにでてくる。 村上:僕はいつも、小説というのは三者協議じゃなきゃいけないと言うんですよ。・・僕は「うなぎ説」というのを…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」(6)第六感

前回のエントリーを書いていて、人間には第六感があるが、デジタルの世界にはそれがない、ということをいいたいのだろうか、と思った。で、梅田氏の本のどこかに第六感という言葉がでてきたことを思い出した。探してみると、p29〜30で、江島健太郎とい…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく−いかに働き、いかに学ぶか」(5)「知的生活の方法」

わたくしの持っている渡部昇一氏の「知的生活の方法」は昭和54年9月刊の26刷で、初版が51年4月であるから、刊行されて3年以上たってから購入したことになる。評判になっていることは知っていたが、長い間、絶対に読むものかと思っていた。まず「知…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく」(番外)「電子立国日本の自叙伝」(2)

1876年、グラハム・ベルが電話を発明した。その当時の電話の最大の問題点は音声電流が電線を通っていくうちに減衰してしまうことで、それを解決したのが、1906年に発明された三極真空管であった。しかし真空管には限界があった。タマ切れを起こすと…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく」(番外)「電子立国日本の自叙伝」(1)

相田洋「電子立国日本の自叙伝」(日本放送出版教会 1991年 4巻 のちNHKライブラリー 7巻 1995年)は、1990年にNHKテレビで放映された番組を活字化したもので、わたくしは丸谷才一・山崎正和の「日本史を読む」(中央公論社 1998年…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」(4)雪かき仕事

内田樹氏の「村上春樹にご用心」(アルテスパブリッシング 2007年10月」は「私たちの世界にはときどき「猫の手を万力で潰すような邪悪なもの」が入り込んできて、愛する人たちを拉致してゆくことがある。だから、愛する人たちがその「超越的に邪悪なも…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」(3)個と共同体と公共

個と共同体というのは日本の思想の根っこにある大問題で、これについてはこれまでも数え切れないくらいの文章がかかれてきている。梅田氏はこの問題自体を論じようとするのではなくて、ネット時代が個あるいは共同体にどのようなインパクトをあたえるかとい…

梅田望夫「ウェブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」 (2)希望の国

村上龍氏の「希望の国のエクソダス」は「一言で言うなら、中学生の一団が「現代日本」の中で反乱を起こし、北海道に新しい「希望の国」を作る話」(加藤典洋「小説の未来」朝日新聞社2004年)である。文春文庫の「文庫版あとがき」で村上氏は、なぜ中学…

梅田望夫「ウエブ時代をゆく −いかに働き、いかに学ぶか」 (1)働くということ

ちくま新書 2007年11月 本書を読んでいある間、ずっと村上龍氏の著作のことが頭に浮かんでいた。たとえば「13歳のハローワーク」であり、「希望の国のエクソダス」である。本書の主題がサバイバルであり、若者の仕事であることからであろう。梅田氏…

補遺3

梅田望夫さん、近藤淳也さんの本を読んでいると、梅田さんも近藤さんも、あるいは一般的にグーグル創設者をふくむシリコンヴァレー系の人も、みな理科系の人なのだなあ、ということを強く感じる。不特定絶対多数への信頼ということもそれと密接に関係してい…

補遺2

近藤淳也『「へんな会社」のつくり方』を読んでいて、この会社の人事考課とか給与査定はどうなっているのかなどという馬鹿なことを、ちょっとかんがえた。 とにかく少人数の会社のようであるから、フラットな組織であり、仕事の見晴らしがきくのであろうかれ…

補遺1

「ウェブ進化論」ではてなという会社を知った関係で近藤淳也『「へんな会社」のつくり方』というへんな本を読んでいる。近藤氏ははてなという会社の社長さんである。 何だかかなり安直なつくり方の本で、梅田氏の「ウェブ進化論」が氏の半生のエッセンスであ…

(完)進化論

「ウェブ進化論」を読んでいて気持ちがいいのは、著者のこれからの世代への目が温かいことが関係しているように思う。最近の世論を見ていると若者にきびしく、また若者の方でも未来に展望を見出せないでいるというような報道が多い。 わたくしの友人で大学で…

8 科学 

グーグル的な民主主義が機能するかどうか、一番問題な分野が科学である。 科学においては、正しいか、正しくないかであって(ということにも主としてポストモダンからの強力な反論があるが、それはおいておいて)、検索エンジンがトップにもってきたものが正…

7 グーグル 

わたくしも本書を読むまでグーグルとは単なる検索エンジンの会社であると思っていた。それにしても愛想のない作りの入り口であるなあ、という印象で、ごてごてしたコンビニみたいなヤフーをもっぱら使っていた。もっとも、出典のわからない文章を調べるとき…

6 見えざる手

何が正しいかを知ってそれぞれが行動しているわけではないのに、各自のばらばらの行動の結果として望ましい事態が生じてくるという構造は、アダム・スミスの見えざる手を連想させるものである。スミスの世界においては何か大きな目標があって、それに向かっ…

5 オープンソース

オープンソースとは、ソフトウエアのプログラムソースをネット上で無償公開してしまうことであるが、ここで梅田氏は、自分のもつ情報をネット上で無償で公開してしまうことにまで概念を広げようとしている。オープンということは組織に属さないということで…

4 ブログ

ブログが一般化して、今まで言葉を発信してこなかったたくさんの人が発信をはじめた。大部分はゴミかもしれない。しかし、100人に一人面白い人がいれば、分母が大きいだけにインパクトがある。今までメディアで発言していたひとは、「選ばれた人」ではな…

3 ロングテール現象

今朝の朝日新聞の読書欄を読んでいたら、ある書店での売り上げトップが本書になっていた。売れているらしい。 さて、ロングテール現象。梅田氏があげるのが書籍の例である。本の売れ方をグラフ表示するとする。右端に最大に売れている本を表示し、左端に全然…

2 民主主義

梅田氏がIT器機の継続的な価格低下(チープ革命)とともにもう一つ重視するのが、「オープンソース」である。氏が「スペックもない、製品計画や製品戦略もない、開発工程管理もリリース計画もない」というオープンソースの典型がリナックスなのであるが、…

感想1

梅田望夫氏の「ウェブ進化論 − 本当の大変化はこれから始まる」(ちくま新書 2006年2月10日初版)を読んで面白かったので、しばらく、それに関連して思いついたことを書いていくことにしたい。 著者の梅田氏はいわゆるシリコンバレー族の一人であるら…