2002-01-01から1年間の記事一覧

山家悠紀夫 「「構造改革」という幻想 経済危機からどう脱出するか」

岩波書店 2001年9月21日初版 「構造改革]批判第2弾。 失われた10年という見方がそもそも間違っているという。 90年代最初の経済不振は、バブル破綻にたいして当然おきることがおきたに過ぎない。バブルが大きかっただけに、その反動の経済不振…

小野善康 「誤解だらけの構造改革」

日本経済新聞社 2001年12月17日 初版 たぶん一種のケインズ派による日本の「構造改革批判」。非常に説得的。ただ総論であり、個々の細かい分析は一切されていない。 基本的には「合成の誤謬」論である。 これだけ失業率があがっているのに、小泉内閣…

John D. Fitzgerald 「 The Great Brain 」

[ Yearling 1967 ] これも、「Big Fat Cat」 の推薦図書の一冊。「自分のことを"Great Brain"と公言する自信家で金に抜け目のな小学生トムがいろいろ考えだす商売のアイデイアが面白い」話ということであるが、なかなかけどうして決してそれだけのものでは…

東谷暁 「誰が日本経済を救えるのか!」

[日本実業出版社 2002年2月10日初版] えらく大袈裟なタイトルの本であるが、内容はさまざまなひとの説く日本経済再生論を比較検討したまっとうなものである。別に誰の説が日本経済を救えるといっているわけでもない。みなに考えるための視座を提供…

養老孟司「「都市主義」の限界」

[中公叢書 2002年2月15日 初版] たぶん、わたくしは解剖学の実習で養老氏に指導されたこともあるはずなのだが、全然印象に残っていない。少なくとも現在の氏のような談論風発というような印象ではまったくなかった。おそらく、氏はある種の蓄積が一…

Robert Arthur 「 The Three Investigotors 8 The Mystery of the Silver Spider 」

[Rondom House 1967] Silver Spider とは、ヨーロッパの極小君主国の象徴である小さな銀の飾り。この存否がその小国の運命を左右する。それをめぐる冒険物語。 いくら子供むけの話でも、小さな飾りの有無が国の運命にかかわるなんて説得力に欠けるなあ、と…

榊原英資「新しい国家をつくるために」

[中央公論社 2001年12月25日 初版] 榊原氏は、自分の意見を状況によって変えるのではないかと思えるところがあるので、ちょっと信用できないところがあるが、かって自分はこう主張していたということをはっきり書くという点ではフェアなひとかもし…

吉川洋「高度成長 日本を変えた6000日」

[読売新聞社 1997年4月9日初版] 旧民法における家制度では、戸主は家族の居所を指定する権利、35歳までの家族の結婚相手を決めるあるいは認めない権利をもち、妻は法的には未成年者と同じ「無能力者」であった。 1950年(昭和25年)では、日…

Robert Arthur 「 The Three Investigators 7 The Mystery of the Fiery Eye 」

Random House 1997 少年探偵団ものの4冊目。Fiery Eye は宝石の名前。こういう話を大人むけに書いたら、ご都合主義といわれること必定である。子供はそんな文句はいわないから、作者も都合のよい偶然で楽しく話をはこんでいく。今までよんだ4冊のなかでは…

小林慶一郎 加藤創太「日本経済の罠 なぜ日本は長期低迷を抜け出せないのか」

[日本経済新聞社 2001年3月15日 初版] 村上龍「対立と自立」(NHK出版)で、北野一氏が、2001年の自民党総裁選挙で各候補がかかげた経済政策の中で、一番ドラスティックなのが橋本竜太郎が掲げたもので、それは小林らの「日本経済の罠」での…

井伊雅子 大日康史「医療サービス需要の経済分析」

[日本経済新聞社 2002年1月7日初版] 自分の仕事の関心で読んだ本。まじめな医療経済学の本で、偏微分とか行列式とか数式がたくさんでてくるが、すべて飛ばして読んだ。そのため理解がどこまでとどいているかは覚束ない。 この10年で日本の医療費は…

Robert Arthur 「The Three Investigaors 3 The Mystery of the Wispering Mummy 」

[Rondom House 1965] 少年探偵団ものの一冊。3000年の眠りからさめて、ささやくミイラの話。 3人の少年探偵の指導者であり、思考部門担当の少年は、なんとなく可愛げのないこまっしゃくれたところのある少年であるが、科学の信奉者であり、まこと…

W.カール・ビブン「誰がケインズを殺したか 物語で読む現代経済学」

[日経ビジネス人文庫 2002年2月1日文庫版初版 1990年翻訳原著刊] この本を読んで、経済について、いくつか、とんでもない誤解をしていたことに気づいた。たとえば、ニュー・ディール政策はケインズとはまったく関係ないのだそうである。 本書は…

竹内靖雄「正義と嫉妬の経済学」

[講談社 1992年9月3日初版」 新古典派というかアダム・スミス派の竹内氏の著書を読み返してみようかと思う。 竹内氏の本はどれも大変楽しく読める。それは氏が大変な教養人・読書人であるのと、「おれが日本を運営すれば・・・」といったあぶらぎった…

Robert Arthur "The Three Investigators 1 The Secret of Terror Castle"

アメリカの小学生向け「少年探偵」シリーズの第一作。このアメリカの少年探偵達は、会社をつくり、自分たちの活動の社会への宣伝効果をしかっり計算しながら、行動する。 そうはいっても子供と大人の対比など、きちっと達者な筆で描かれている。 なんとなく…

吉川洋「転換期の日本経済」

[岩波書店 1999年8月27日初版] ケインズ学派(中谷巌氏のような現代日本における主流である新古典派に対する)により書かれた日本経済の分析の本である。 これを読むと経済学というのは、まだ何もわかっていないのだなあ、と思う。景気を左右するもの…

冷泉彰彦「9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わったか」

[小学館 2002年3月10日初版] たいへん気持ちのよい本である。2001年9月11日以降のアメリカについてのレポートであり、観察された事実、それについての報道、それにたいする自分の意見を淡々と押さえた筆で述べている。 筆者の立場は日本でいえば「…

森永卓郎「日本経済「暗黙」の共謀者」

[講談社+α文庫 2001年12月20日初版] なんか著者の森永氏は変になっているみたいである。木村剛という人と論争しているらしく、その私怨から書かれた本のようにも思われる。 一種の陰謀史観というか、デフレが続くことで利益をえる強者が共謀してデ…

森永卓郎「バブルとデフレ」

[講談社現代新書 1998年12月20日初版] 村上龍の「だまされないために・・・」で言及されていたので、思い返して読み直してみた。3年以上前に書かれた本であるが、現状とずれていないというか、著者の予測通りデフレは進行している。 著者によれば、…

村上龍「だまされないために、わたしは経済を学んだ」 

[NHK出版 2002年1月30日初版] 村上龍が、金融問題などを論じていることには、あちこちから「あいつは何をやっているんだ?」というような評があるようである。福田和也も「作家の値うち」で<証券アナリスト>みたいと揶揄している。 その村上が…

中谷厳「痛快!経済学」(文庫版)

[集英社文庫 2002年1月25日文庫版初版 1999年3月原版初版] 今さらこういう本を読んでもという気もするが・・・。1999年3月にでたマンガ版?の改定版。前著は読んでいないが、この3年の間の日本経済の動向をふまえて、増補・加筆したものら…

C. S. Lewis " The Chronicles of Narnia 4 Prince Caspian"

[1951年初版] 連作の歴史年代としては4番目、作としては「ライオンと魔女」につぐ2作目。 今まで読んだ3作のなかでは一番平凡。悪が小さいし、作全体が単なる物語の部分が多く、広がりに乏しい。象徴性を欠く。もっとも、いろいろな先行する作品の…

家近良樹「孝明天皇と「一会桑」 幕末・維新の新視点」

[文春新書 2002年1月20日初版] 江戸から明治への転換は、本来諸藩の合議体制という江戸との連続性を残した体制に落ち着きかけていたのに、徳川慶喜のボーン・ヘッドによって、西郷・大久保路線に9回ツーアウトからの逆転ホームランを喫してしまっ…

C. S. Lewis 「The Chronicles of Narnia 2 The Lion, the Witch and the Wardrobe 」 

[1950年初版] 第一巻の「Magician's nephew 」が「創世記」なら、この巻は「キリストの死と再生」である。 そして、この巻にもあるのが、<神>であるライオン、アスランの孤独と寂しさである。<神>は絶対的にひとりぽっちなのである。誰一人として…

C. S. Lewis"The Chronicles of Narnia 1 The Magician's Nephew "

[1955年初版] これも「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」巻末の推薦図書の一冊。 有名な本だが、今まで食わず嫌いで敬遠してきたが、読んでみて、とても面白かった。 「創世記」である。世界を創るライオンの孤独な姿! 作者は神学…

金谷武洋「日本語に主語はいらない 百年の誤謬を正す」

[講談社選書メチエ 2002年1月10日初版] <目から鱗>の本である。 著者は、カナダのフランス語圏であるケベック州で日本語を教えているひとである。 前の「ビック・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」も、ながらく米国でくらした女性が、…

K. A. Applegate "Animorphs 3 The Encounter"

[ Scholastic 1996 ] 第一巻が男の子、第二巻が女の子で、第三巻のこれは<鷹>が主人公になる。5人の子供たちが動物に変身して宇宙からの侵入者をたたかう話であるが、子供たちが動物に変身できる時間は2時間以内で、それ以内に人間にもどらないと永久に…

スーザン・ソンダク「この時代に想う テロへの眼差し」

[NTT出版 2002年2月5日初版] 前の福田氏の本と違って、きわめて重い印象の本である。ここにはほとんど全世界を相手に独りで闘っているようなひりひりした剥き出しの個がある。シニックなものは微塵もない。世界のすべてに異を唱えるが、ただ反対す…

福田和也「新・世界地図 直面する危機の正体」

[光文社 2002年1月30日初版] 2001年9月11日をもって世界は変わった、ここから本当の21世紀がはじまるというのは、多くのひとのもった感想であるかもしれない。 わたくしもそう思うものであるけれども、わたくしなどは単に「20世紀の(ある…

橋本治「「三島由紀夫」とはなにものだったのか」

[新潮社 2002年1月30日初版] わたしが、三島由紀夫についてはじめて、なにか変だなというか違和感のようなものを感じたのは、その死の日の夕刊を見て、三島が死の日の朝、「豊饒の海」の最後の部分の原稿を編集者に渡していたという記事を読んだとき…