2002-01-01から1年間の記事一覧

佐野洋子「100万回生きたねこ」

講談社 1977年10月20日初版 絵本。100万年のあいだ、100万回死んで、100万回生きた、とら猫の話。 このとら猫は、何よりも自分を愛するので、飼主に愛されてもわれかんせずで生きている。それが死ぬと飼主は一方的に悲しむが、とら猫はまた…

諸富祥彦「さみしい男」

ちくま新書 2002年7月20日初版 日本の男は若い男も中年もまったく元気がない。それを脱するためにはどうしたらいいか? 「自分に正直」であることを何より大切にし、しっかりした「自分」を持った、いい意味での個人主義に徹することである。そのため…

立花隆「「田中真紀子」研究」

文藝春秋 2002年8月10日 初版 こういう題名になっているが、実は田中角栄研究で、田中真紀子は刺身のツマ。 日本の現在の政治が、そして経済が田中角栄が築き上げた枠組みの中で動いているということが非常によくわかる。そして小泉純一郎のしている…

加藤典洋「ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ」

クレイン 2002年5月9日初版 雑文集。 まずマフマルバフの「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」への感想からはじまる。そして、このマフマルバフの文が、なぜ多くの「左翼」的な世界観がアメリカを批判する「正…

長谷川宏「丸山真男をどう読むか」

講談社現代新書 2001年5月20日初版 丸山真男は知的世界の住人であった。知的世界においてならば自分と異質な人間とも<普遍的>な対応ができたひとであった。 一方、丸山真男は終生、軍隊体験に違和感を持ち続けた。そこにおける自分と異質な人間とは…

新野哲也 「大人になるための思想入門]

新潮選書 2002年 7月20日初版 本屋で偶然みつけた。著者についてはまったく知るところがないが、西部邁の友達でもあるらしい。なんとなくそんな感じのするところもある本である。思想入門というタイトルになっているが、どちらかというと、思想入門と…

橋本治「ああでもなくこうでもなく3 「日本が変ってゆく」の論」

マドラ出版2002年5月10日初版 橋本治が「広告時評」に連載している時評集の第3巻。 橋本は「村のはずれでちっぽけな自分の田畑を耕している自営農」であり、終わってしまった20世紀は「共に暮らしてはいたけれども、もう死んでしまった他人」であ…

丹生谷貴志「家事と城砦」

河出書房新社 2001年1月20日初版 丹生谷貴志の名前をはじめて知ったのは「書肆風の薔薇」というところから刊行された「吉田健一頌」という本の中でであった。この本は、丹生谷貴志、四方田犬彦、松浦寿輝、柳瀬尚紀の4人がそれぞれ吉田健一論?を書…

島田雅彦「フランシスコ・X」 

講談社 2002年4月26日初版 フランシスコ・ザビエルを主人公とした小説?である。伝記ではなく、ノン・フィクションでもないが、小説であるというには何かためらいを感じさせるものがある。 小説であると呼ぶのをためらわせるのは、これがザビエルとい…

内田樹「寝ながら学べる構造主義」

文春新書 2002年6月20日初版 構造主義以前、始祖としてのソシュール、そのあと4人組み(フーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカン)の計6章からなる。最初の2章が面白く、あとはごく常識的な紹介である気がした。 著者によれば、本書は入門書…

熊野純彦「レヴィナス入門」

ちくま新書 1999年5月20日初版 内田氏の論がまさに弟子としてのレヴィナス論であるとすれば、第三者によるレヴィナス論である。内田氏の描くのが躁状態のレヴィナスであるとすれば、欝状態のレヴィナスである。 歴史の中のフランス5月革命の同時代者…

内田樹「レヴィナスと愛の現象学」

せりか書房 2001年12月15日 初版 著者の「「おじさん」的思考」を読んで、読んでみる気になった。 この本を読んで、「「おじさん」的思考」を読んだときには、カソリックかと思ったレヴィナスはユダヤ教に依拠していることがわかった。依拠している…

吉田武「虚数の情緒 中学生からの全方位学習法」

東海大学出版会 2000年2月20日初版 基本的には数学論、数論の本であるが、それにとどまらない変な本である。著者の「オイラーの贈り物」は数学書としては稀な3万部をこえるベストセラーになったのだそうであるが、eのiπ乗が−1になるというオイラー…

内田樹「「おじさん」的思考」

晶文社 2002年4月10日初版 「あとがき」によれば、最近きわめて旗色の悪い「日本の正しいおじさん」の擁護と顕彰のための本ということであり、「額に汗して仕事をするのはよいこと」であると信じ、「強いお父さんと優しいお母さんとかわいい子供たち…

岡田玲一郎「近未来の医療経営 消える病院、残る病院」

厚生科学研究所 2002年4月27日初版 何となく際物的な題名だなと思って読んだが、なかなか面白かった。著者は病院事務長など、病院関係で働いてきたひとで、医者ではないらしい。 医療はサービス業だといわれているが、ディズニーランドとは違う。不本…

竹内靖雄「衰亡の経済学 日本の運命 あなたの運命」 

PHP 2002年4月30日初版 著者も「あとがき」で書いている。「われながらよくも同じことばかりいいつづけてきた。」 相変わらずの主張の最新刊である。基本は「日本型社会主義の終焉」。 日本は太平洋戦争で緒戦には勝ったものの、ミッドウエーの敗…

池上直己「医療の政策選択」

勁草書房 1992年 6月10日 初版 1992年に書かれた本であるので、日本の医療費が非常に切迫した状態になることは想定されていない。 医療の議論においては価値観から離れることはできない。 「経済の論理」←→「医療制度の歴史」←→「医の倫理」←→「…

広井良典「定常型社会 新しい「豊かさ」の構想」 

岩波新書 2000年6月20日初版 きわめて理念的な提言の本。したがって具体的な財政的裏づけや、それを実現する政治過程といったものはほとんど視野にはいっていない。 富の成長にかかわるのが”経済”であり、富の分配にかかわるのが”政治”であるとすれば…

スティーブン・キング「アトランティスのこころ」

新潮社 2002年4月25日初版 キングの長編小説というか、中篇を5編つなげた特殊な構造をもつ小説。 約半分を占める最初の部分は、時代は1960年で、キング特有の異世界ものの構造をもつ。そこでの主人公の少年とその女友達と男友達がその後の物語を…

養老孟司「人間科学」

筑摩書房 2002年 4月25日 初版 とんでもない本ではある。古来からの哲学の大問題に一人で格闘しているような趣がある。だから、ここでとりあげられているどれか問題一つをとっても、それについて古来から万巻の書が書かれているはずで、それを読んで…

池上直樹 J.C.キャンベル「日本の医療 統制とバランス感覚」

中公新書 1996年8月15日初版 日本の医療経済学者とアメリカの日本の政治を研究している政治学者による日本の医療政策を論じた本であり、もともとは医療費の高騰でどうにもならなくなっているアメリカに、なぜ日本の医療が低医療費ですんでいるかを紹…

[読書備忘録{竹内靖雄「「日本人らしさ」とは何か 日本人の「行動文法」を読み解く」

PHP文庫 2000年3月15日初版 「日本人の行動文法」として1995年10月に東洋経済新聞社から刊行されたものに加筆し改題したもの 行動文法は不変ではない。社会的状況が激変すれば、それに応じて意外に急速に変る、というのが前提になっている。…

山本七平「日本資本主義の精神 なぜ、一生懸命働くのか」

光文社文庫 1984年9月10日初版 カッパ・ビジネスとして1979年初版 この本は1979年に書かれているから、まだ日本的経営がもてはやされていた頃に書かれている。 山本氏はいうまでもなく山本書店店主であるが、氏の業界である出版界において多…

小室直樹「日本資本主義崩壊の論理 山本七平”日本学”の預言」

光文社カッパ・ビジネス 1992年4月25日 初版 今から10年前に書かれた本。 日本社会科学の三大不思議。1)「日本資本主義の精神」研究の不在 2)マルクシズム研究の不在 3)崎門の学からの天皇研究の不在 1)をおこなったのが唯一、山本七平「日…

野口武彦「幕末気分」

講談社 2002年2月20日 初版 幕末の、町人、武士から、将軍までの生態を描いたもの。要するに誰も明治がくるなんて思ってもいない(あとから考えれば大)変革期に右往左往しながら生きるひとびとのさまざまな姿を通して、われれれの時代もあとからみる…

中井久夫 「清陰星雨」 

みすず書房 2002年4月5日初版 精神科医(だけのわくには収まらないひとだが・・・)である中井氏の最新エッセイ集。 中井氏はよく、分裂症(と最近では呼ばないことになったが)素因をもちながら、不断の努力によって、発症せずに(あるいは短期の発症…

広井良典 「医療の経済学」 

日本経済新聞社 1994年8月24日 初版 同じく、自分の専門的興味から読んだ本。 日本の医療費は、60−65年に大きく伸びている。これは、国民皆保険(’61)によるアクセスの増加による。 70−80年に再び大きく伸びる。投薬・検査の増加、物価ス…

広井良典 「医療保険改革の構想」

日本経済新聞社 1997年1月20日初版 まったく自分の専門的興味から読んだ本。 従来の日本の医療は、「途上国型医療」であり、「質は二の次でよいから、国民誰もが安い値段で医療サービスを受けられる」ことを目指した、公平・平等を求める制度であった…

小室直樹「国民のための経済原論Ⅰバブル大復活編」 

光文社カッパ・ビジネス 1993年5月30日初版 「日本経済崩壊の論理」の続編である。1993年に書かれている。 バブルの崩壊という予言は、それがおきるまでは誰も信じないものである。そして20年たつとまた人々の記憶が薄れ、再びバブルがおきる。…

小室直樹「日本経済破局の論理 サムエルソン「経済学」の読み方」

光文社カッパ・ビジネス 1992年11月25日初版 1992年に書かれている。バブル崩壊直後である。 1992年に入り、企業の手許流動性資金が減少してきている。これは、著者によれば、エクィティ・ファイナンスのためである。エクィティ・ファナンス…