2011-01-01から1年間の記事一覧

J・グループマン「医者は現場でどう考えるか」(5)

第10章は、最近の医療で頻用される判定システムにつき論じている。判定システムというのは、患者さんの診断名、状態あるいはデータなどがわかると、そこからどのような治療法を選択すぼきかを自動的かつ機械的に導出するシステムである。このシステムに従…

J・グループマン「医者は現場でどう考えるか」(5)

第10章は、最近の医療で頻用される判定システムにつき論じている。判定システムというのは、患者さんの診断名、状態あるいはデータなどがわかると、そこからどのような治療法を選択すぼきかを自動的かつ機械的に導出するシステムである。このシステムに従…

今日入手した本

持ち重りする薔薇の花作者: 丸谷才一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (17件) を見る 丸谷氏の最新長編小説。だいぶ前に氏の「輝く日の宮」の感想を書いたことがあって、これが氏の最期…

J・グループマン「医者は現場でどう考えるか」(4)

第9章は医療の場における製薬資本の影響について論じている。 ある内分泌専門医に製薬会社の宣伝担当がつきまとうところからはじまる。こういう職種は現在日本ではMR(Medical Representative )と呼ばれている。薬の情報を医師に伝える製薬会社の職員で…

J・グループマン「医者は現場でどう考えるか」(3)

第5章は「家族の愛が専門家を覆す」という題(原著では、A New Mpther'challenge という題)で日本語訳はやや感傷的な感じがある。ベトナムから里子としてアメリカに連れてきた子どもがすぐに重篤な免疫不全状態となり、SCID(重症複合免疫不全症)の診…

J・グループマン「医者は現場でどう考えるか」(2)ヒューリスティック

ヒューリスティックは heuristic で、これ自体は形容詞で原義は「発見的」というようなことらしく、heuristics で名詞になるらしい。主にコンピュータ業界と心理学の分野で使われる言葉のようで、手っ取り早く近似解を得るやり方のことを指すようである。こ…

今日入手した本

〈真理〉への勇気 現代作家たちの闘いの轟き作者: 丹生谷貴志出版社/メーカー: 青土社発売日: 2011/09/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 47回この商品を含むブログ (12件) を見る 丹生谷氏の一番新しい本。丹生谷氏はわたくしが今まで読んだなかで一番…

J・グループマン「医者は現場でどう考えるか」(1)

石風社 2011年10月 著者はエイズや血液腫瘍を専門にする臨床家。このタイトルを見ると、医者が臨床の現場でどのように考えるかという、医者に共通した思考法について論じているように見えるが、そうではなく現在の医療の場で主流となっている思考の方…

今日入手した本

医者は現場でどう考えるか作者: ジェロームグループマン,Jerome Groopman,美沢惠子出版社/メーカー: 石風社発売日: 2011/10メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 51回この商品を含むブログ (13件) を見る 原著の題名は「How Doctors Think 」で、実はもって…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(補遺)ブルア

前の記事でブルアについて書いていて、全然見当違いのことを書いているのではないかと気持ちが悪かった。ブラウンの本のあと、読みかけになっていたフラーの「我らの時代のための哲学史」を再開したのだが、索引をみるとブルアについて多くの言及がされてい…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(8)

ここではブルアというひとの科学知識の社会学についてのブラウンの議論をみていくのだが、これがいたってわかりにくいものであった。 ソーカルは「知の欺瞞」の「日本語版への序文」で、「知の欺瞞」には二つの標的があるとしている。一つがポストモダンの著…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(7)

第6章「社会構成主義の自然主義派」にフォアマンというひとの「ワイマール文化、因果関係、量子論 1918−1927 ドイツの物理学者および数学者の敵対的な知的環境への適応」という論文が紹介されている。1971年に発表されたものだそうである。その…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(6)

第4章「社会構成主義のニヒリズム派とポストモダン」は、ポストモダンとファイヤアーベントを論じているのだが、著者のポストモダンへの姿勢が定まらないので、論旨がよくわからなくなっている。ブラウンはポストモダンが左派の信用を失墜させるとして基本…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(5)幕間:フラー「我らの時代のための哲学史」など

ブラウンの本のクーンにかんするところを読んでいて、思い出して本棚の隅から引っ張り出してきたフラーの「我らの時代のための哲学史」をぱらぱらと見ていたら面白くてついつい第2章まで(約200ページくらい)読んでしまった。それでそれに関連して、ポ…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(4)

前に続いて、科学哲学にかんする議論の、A)論理実証主義、B)ポパー、に続く、C)クーンである。 C)クーン:著者によれば、クーンが「科学革命の構造」でいおうとしたのは、科学が実際にはどのようにおこなわれているかということであったという。今ま…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(3)

社会構成主義者の言っていることをきくと科学者たちは、その内容が自分の経験とはあまりにかけ離れていることにめまいを感じると著者はいう。しかし、と著者はいう。しかし、それはフェミニストが哲学や社会科学のさまざまに感じる「女性の経験が不当にも軽…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(2)

科学についての見方には対決の長い歴史がある。プロタゴラスは「人間は万物の尺度である」といった。これは社会構成主義につながる相対主義のスタートである。一方、プラトンはそのような相対主義への対決を自己の課題とした。 科学革命の成功をみて、啓蒙主…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」

みすず書房 2010年11月 副題は「ソーカル事件を超えて」。原題は「Who Rules in Science?」副題が「An Opinionated Guide to the Wars」 「科学を誰が支配するのか」あるいは「科学は誰が支配すべきか」であり「ソーカル事件(サイエンス・ウォーズ)…

D・ヒューム「懐疑派」in「道徳・政治・文学論集」(3)

中央公論社「世界の名著32・ロック・ヒューム」の巻頭にある「イギリス経験論と近代思想」という解説で、大槻春彦氏がヒュームについて書いていることにいろいろと教えられた。 ヒュームは数学が苦手だったのだそうである。「人性論」で数学者や幾何学者に…

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なぜ科学を語ってすれ違うのか――ソーカル事件を超えて作者: ジェームズ・ロバート・ブラウン,青木薫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2010/11/20メディア: 単行本 クリック: 40回この商品を含むブログを見る 書店で偶然に見つけた本。著者もまったく知ら…

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耄碌寸前 (大人の本棚)作者: 森於莵,池内紀[解説]出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2010/10/16メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る 何だかわたくしのことを言っているようなタイトル。寸前ではなく、ただ中かもし…

D・ヒューム「懐疑派」in「道徳・政治・文学論集」(2)

前のエントリーで述べたように、わたくしはポパーを通して間接的にヒュームを知った人間なので、「プトレマイオスの体系とコペルニクスの体系を惑星の位置を測定することによってその説の優劣を比較できる」とする立場は、有限の観察によって真偽を決定でき…

D・ヒューム「懐疑派」in「道徳・政治・文学論集」

名古屋大学出版会 2011年7月 ヒュームのエッセイ集としての既刊の「市民の国について」には訳出されていない論文として、まず「懐疑派」を読んでみた。訳文で今一つ論旨がわかりにくと思われた部分については Oxford World Classics の 「David Hume Se…

M・ユルスナール「ハドリアヌス帝の回想」

白水社 2001年 これを読んだのは、入院中に読んだ須賀敦子氏の「ミラノ 霧の風景」をきっかけに、「コルシア書店の仲間たち」「トリエステの坂道」「ユルスナールの靴」と読んできて(「ヴェネチアの宿」はスキップして)、その中で「ユルスナールの靴」…

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須賀敦子と9人のレリギオ―カトリシズムと昭和の精神史 (日外選書Fontana)作者: 神谷光信出版社/メーカー: 日外アソシエーツ発売日: 2007/11/01メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (5件) を見る どうも須賀敦子のカトリック信仰というのがよ…

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ヒューム 道徳・政治・文学論集[完訳版]作者: デイヴィッド・ヒューム,田中敏弘出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2011/07/10メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (11件) を見る 先日の毎日新聞の読書欄で紹介されていた。ヒュー…

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黒の過程作者: マルグリット・ユルスナール,岩崎力出版社/メーカー: 白水社発売日: 2008/12/16メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る追悼のしおり (世界の迷路?)作者: マルグリットユルスナール,岩崎力出版社/メーカー…

須賀敦子「トリエステの坂」in 「須賀敦子全集2」、「ユルスナールの靴」in 「須賀敦子全集3」

イタリアには3泊4日しか滞在したことがない。だいぶ以前、もう20年位前にドイツでの学会の後、たしかミラノへ飛び、そこで一泊し、翌日ヴェネチァにゆき、その後アンコーナという港町にいって、そこから当時のユーゴスラビアのドゥブロヴニクへ船でわた…

須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」in 「須賀敦子全集1」

須賀氏の経歴をネットなどで見ると、1929年の生まれで、そうだとすると終戦時には16歳である。聖心女子大で学んだ後、慶應義塾大の修士課程に進学するが、中退して、フランスの神学に関心をもちパリ大学に留学するが、パリの雰囲気に合わず、イタリア…

今日入手した本。

須賀敦子全集〈第3巻〉 (河出文庫)作者: 須賀敦子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/11/02メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (21件) を見る須賀敦子全集〈第4巻〉 (河出文庫)作者: 須賀敦子出版社/メーカー: 河出書房新社…