2004-01-01から1年間の記事一覧

町田康 「パンク侍、斬られて候」

[マガジンハウス2004年3月18日 初版] これを読んだのは加藤典洋の「小説の未来」(朝日新聞社2004年)に町田康がとりあげられていて面白そうだったのと、朝日新聞(だっかな?)の書評で高橋源一郎がこの「パンク侍・・・」を絶賛していたからな…

橋本治 「上司は思いつきでものを言う」

[集英社新書 2004年4月21日 初版] 「停滞した日本のサラリーマン社会はなんとかならないのかよ?」を考察する本、とはいうものの。 最初のほうの「埴輪の製造販売」を業務としている会社(美術品としてではなく副葬品としての埴輪を売る会社)におけ…

 高橋源一郎 「ジョン・レノン対火星人」 

[講談社文芸文庫 2004年4月10日初版] 本書は1985年に刊行された小説であるが、最初に発表された小説である「さようなら、ギャングたち」の前にかかれ、そのままでは発表されなかった処女作「すばらしい日本の戦争」をごく一部改定したものである…

高橋源一郎 「ジョン・レノン対火星人」

[講談社文芸文庫 2004年4月10日初版] 本書は1985年に刊行された小説であるが、最初に発表された小説である「さようなら、ギャングたち」の前にかかれ、そのままでは発表されなかった処女作「すばらしい日本の戦争」をごく一部改定したものである…

小倉千加子 「「赤毛のアン」の秘密」

[岩波書店 2004年3月24日 初版] なんでこんな本を読んでいるのかは秘密である。 小谷野敦氏の「聖母のいない国」に、「赤毛のアン」が言及されており、そこでこの本の元評論である「アンの迷走― モンゴメリーと村岡花子」が小谷野氏を刺激したような…

中井久夫 「徴候 記憶 外傷」

[みすず書房 2004年4月1日 初版] その中の「医学・精神医学・精神療法は科学か」という論文のみをとりあげる。 わずか20頁たらずで、このテーマを論じたものである。 中井氏はハーマンの「心的外傷と回復」を訳している。ハーマンという人は大変問題…

リチャード・ドーキンス 「虹の解体 いかにして科学は驚異への扉を開いたか」

[早川書房2001年3月31日初版] 「利己的な遺伝子」のドーキンスの科学擁護の書。 ニュートンが虹を解体して、異なる波長の光の束であると説明したことは、自然の神秘を科学が味気ない説明に変えてしまうことの代表的な例をされてきた。しかし、それは…

山本俊一 「東京大学医学部紛争私観」

[本の泉社 2003年7月20日 初版] 養老孟司「運のつき」で知った本。 著者の山本氏は当時の東大医学部疫学教授で紛争当時学生委員として、大学当局と学生側のパイプ役のような役割であったため、この間のさまざまな情報が集約する立場にあった。当時か…

庄司薫 「薫ちゃん四部作」

[中公文庫 1969〜1977年] 思うところあって、「薫ちゃん四部作」を読み返してみた。 まず年代的なことを確認しておく。1959年 「喪失」(福田章二名義) 中央公論新人賞 1969年 「赤頭巾ちゃん気をつけて」 芥川賞 設定69年2月 1969…

 養老孟司 「運のつき」

[マガジンハウス 2004年3月18日 初版] 養老氏がいままであちこちの本でほのめかしていたルサンチマンを全面展開した本である。これを読むと養老氏がいかに執念深い人であるかがわかる。 まず初めが死ぬのは恐くないという話。エピキュロスの<死をお…

養老孟司 「運のつき」

[マガジンハウス 2004年3月18日 初版] 養老氏がいままであちこちの本でほのめかしていたルサンチマンを全面展開した本である。これを読むと養老氏がいかに執念深い人であるかがわかる。 まず初めが死ぬのは恐くないという話。エピキュロスの<死をお…

石井宏 「反音楽史 さらば、ベートーベン」

[新潮社 2004年2月20日初版] バッハ、ハイドン、モツアルト、ベートーベン、シューベルト、ブラームス・・・、クラシック音楽史のビッグ・ネームのほとんどをドイツ人が占めているが、これは後世のドイツ人が捏造した音楽史をわれわれが鵜呑みにして…

稲葉振一郎 「経済学という教養」

[東洋経済新報社 2004年1月23日初版] 「素人の、素人による、素人のための経済学入門」というのが触込みであるが、嘘である。 明確な一つの立場の主張であって、単なる入門書ではない。 数冊にわけて書かなくてはいけない多くの主張が一冊に凝縮され…

半藤一利 「昭和史 1926→1945」

半藤氏が若い人を相手に語りおろした昭和史。というか太平洋戦争への道と太平洋戦争自体がテーマのほとんどであるから、軍・政治家・天皇を中心とした戦前戦中昭和史である。ということで満州における革新官僚などは話題にのぼらない。これはむしろ昭和戦後…

菊地哲郎 「常識の壁」

[中公新書ラクレ 2004年1月10日 初版] われわれ日本人が閉塞感にとらわれているのは、日本人がとらわれている常識のためであって、それをとりはらってみれば未来はばら色である・・・、ということなのだが、ほとんどただのおもいつきと屁理屈みたいな…

小倉昌男 「経営学」

[日経BP社 1999年10月4日初版] 小倉氏はいうまでもなくクロネコヤマトのヤマト運輸の元社長・会長である。運輸省の規制と闘ったひととしても有名である。高橋伸夫氏の本を読んでいて思い出して読み返してみた。 ヤマト運輸の経営の具体的なエピソー…

橋田信介 「イラクの中心で、バカとさけぶ」

[アスコム 2004年1月20日初版] このタイトルが何のパロディかは言うまでもない。そういうタイトルをつけるところにこの本の姿勢が実にはっきりとでている。 日本で数少ない戦争カメラマンによるイラク戦争の内部から(イラク側アメリカから攻撃をうけ…

高橋伸夫 「虚妄の成果主義 日本型年功制復活のススメ」

[日経BP社 2004年1月19日初版] 日本のサラリーマンが大好きという著者が書いた、目下大流行している能力主義・成果主義への反対論である。 著者の主張の根幹は、1)日本の人事システムの本質は、(給料によってではなく)次の仕事の内容で報いるシ…

D・ヒーリー「坑うつ薬の時代 うつ病治療薬の光と影」

[星和書店 2004年1月24日初版] 精神医学は医療のなかでもきわめて孤立した他から分離した地位をしめているように思う。それは一つには西洋医学のバックボーンである疾患の背景にある病理学的変化を探求しても、それがはっきりしないためであり、もう…

栃折久美子 「森有正先生のこと」

[筑摩書房 2003年9月25日初版] フランス文学者?哲学者?の森有正氏の本は『遥かなノートル・ダム』などが評判になった頃に何冊か読んだことがある。今から30年以上も前のことであると思う。ほとんどパリに住みついて思索を続けた人であった氏の本…

折原浩 「ヴェーバー学のすすめ」

[未来社 2003年11月25日初版] 昨年末、羽入辰郎氏の「マックス・ヴェーバーの犯罪」を読んで、ここまで完膚なきまでに批判されている「プロテスタンティズムの倫理・・・」について、ヴェーバー学者はどう答えるのだろうかと思っていたら、まさにそ…

佐野洋子 「神も仏もありませぬ」

[筑摩書房 2003年11月15日初版] 絵本作家佐野洋子のエッセイ。しばらく前から群馬に住んでいるらしい。その生活記。 ここにでてくる住民が魅力的。わたしは田舎が大嫌いであって、絶対に住みたくないと思っているのだが、本書を読んでいると、田舎暮…

酒井順子 「負け犬の遠吠え」

[講談社 2003年10月27日初版] ここでいう負け犬とは、<未婚・子ナシ・30代以上>の女性(狭義)。最優先事項は「現在結婚していないこと」。したがって、広義には、離婚して今は独身の女性も、結婚していないシングル・マザーもここに入る。つま…

G・クライツァー 「デブの帝国 いかにしてアメリカは肥満大国となったのか」

[バジリコ 2003年6月25日初版] ほとんど世界一の肥満大国であるアメリカ人の肥満の話。 この本を読んでいくつか知ってびっくりしたことがあるが、まずその一つがアメリカにおいて、基本的に肥満は貧困層、貧しい労働者層の問題であるということであっ…

竹村公太郎 「日本文明の謎を解く 21世紀を考えるヒント」

[清流出版 2003年12月28日初版] 毎日新聞の書評で養老孟司がとりあげていた本。著者はもと建設省のひと。ダムや河川の技術者から、長良川河口堰の担当者となり、さらには行政官として日本のインフラ整備にかかわったひとである。「地形と気象」から…

J. Stinbeck 「The Pearl 」

Puffin Book 1947 初版 英語の勉強。メキシコの極貧の漁夫が素晴らしい真珠を採ったことから生じる悲劇。ということになると、どこかに神話的・象徴的な感じが必要に思うが、最初の部分こそそういう雰囲気があるものの、あとはリアリズムに傾…

橋本治 「「個性」とは哀しいものである」

新潮社雑誌「考える人」連載「いまわたしたちが考えるべきこと」最終回 2004年冬号 ここでとりあげる文章をふくむ単行本が今年3月に刊行されることが予告されているから、その時にとりあげてもいいのだが、前の村上の文章との関係でここでとりあげる。 …

村上龍 「13歳のハローワーク」

[幻冬社 2003年11月30日 初版] 自分が何が好きかということから、将来の自分の職業について考えてみようと子どもに語りかけるという絵本である。 とはいうももの、実際にいいたいのは、サラリーマン・会社員という選択以外にもいろいろな選択肢があ…

橋内章 「そこに酒あり煙草あり 酒と煙草を楽しむための医学書」

[真興交易(株)医書出版部 2003年12月15日 初版] 現役も麻酔科医の書いた本。このひと酒も煙草も楽しむひとらしくて、最近どうも煙草の評判が悪い、本当にいわれているほど悪いのか?という興味からインターネットを駆使して最近10年くらいの医学…

浜崎智仁 「コレステロールは高いほうが長生きする」

[エール出版社 2003年11月15日初版] 現役の臨床家かつ脂質栄養学者(富山医科薬科大学教授)の書いた本。またかなり専門的な話。 最近日本で出てきたいくつかの疫学研究で、コレステロールが高くても総死亡が高くない、すなわち寿命が長いことが明ら…