2005-01-01から1年間の記事一覧
[講談社現代選書2005年4月20日初版] スピノザは前から気になっていた思想家である。いろいろな人のいろいろな本を読んでいると随所でスピノザの名前にであう。それも全然思想傾向が違うひとの著作においてなのであるから、これは絶対に大事な思想家で…
[みすず書房 2005年4月20日初版] 中井久夫の第四エッセイ集。須賀敦子や神谷美恵子を論じた文、あるいは早逝した門下生である安克昌を悼む文なども素晴らしいが、ここでは「親密性と安全性と家計の共有と」と題された家族を論じた文章をとりあげたい…
[中央公論新社 2005年3月25日初版] 明治26年に実際にあった「河内十人斬り」に材をとった小説であるが、その事件を再現しようとしたものではまったくない。「パンク侍・・・」が別に時代小説を書こうとしたものではなかったのと同じで、その事件は…
雑誌「考える人」は創刊以来、一応買い揃えるようにしている。その最新号が面白かったので、単行本ではないが、とりあげてみることにする。 この号の特集は「クラシック音楽と本さえあれば」である。そこに「わたしのベスト・クラシックCD」という、いろい…
[講談社 2005年1月31日初版] 佐々木マキの挿絵がたくさん入った絵本。童話というのかどうか? 読者として大人を意識したものなのかどうか? ロダーリの「ファンタジーの文法」で紹介されているプロップの民話の構造分析によれば、典型的な民話の構造…
[幻冬社 2005年3月25日初版] 「高慢と偏見」のあとでこれを読むというのも・・・。 今年の最初の方に、村上龍の「最後の家族」にかんして、ちょっと小説家としての村上龍は危ないところに来ているのではないか、などと書いたように思うが、失礼しまし…
[ちくま文庫 中野康司訳 2003年初版] これを読んだのも、ライル→ウッドハウス・オースティンの流れの一環。今まで何回も挫折していたのだが、ついに初めて読破できた。それについては中野康司氏の訳が大きい。再度挑戦してみようかと思って、アマゾンで…
[国書刊行会 2005年2月10日初版] イギリスに生まれ、アメリカに帰化したユーモア小説作家であるウッドハウスの有名なジーヴス・シリーズの一冊である。 なんでこんな本を読んでいるのかというと、「ジレンマ」を読んで面白かったので、ライルの主著と…
昔々20〜30ページほどで放り出したままになっていたものをついに通読した。これで漱石は4作目。「坊ちやん」「こころ」「虞美人草」「我輩・・・」。次は「坊ちやん」を再読することにしよう。 感想1:漱石は大文章家である。感想2:漱石は法螺話を紡…
[哲学書房 1987年6月20日初版] このだいぶ古い本は父の書斎を整理していたらでてきたものである。最近、認知科学の本を読んでいると、ときどきこの本の名前がでてくる。それで読んでみた。読んでみると最初の部分、特に模型の絵の部分には見覚えがあ…
[朝日出版社 2004年10月25日初版] 若手の脳研究者である池谷氏が中高生を対象に脳について講義をしたもの。おそらくそういう本の性質から、まだ議論の余地があるところを断定的に確定しているように述べている部分があるのだろうと思うが、脳研究の…
なんで今頃これを読んだのかというと、内田樹の「おじさん的思考」の中の「「大人」になること−−漱石の場合」と吉本隆明の「夏目漱石を読む」の「虞美人草」のどちらにおいても、宗近くんの大演説の場面が引用されていて、興味を惹かれたからである。 という…
[学陽書房 2005年2月22日初版] これがあの戦闘的といわれた上野千鶴子の本かと思うほど(というほど上野氏の本を読んでいるわけではないが)おとなしい本である。声高に自分の意見を述べるのではなく、データをして語らしめるという社会学の本来の姿…
[岩波科学ライブラリー12 1994年5月23日初版] ギブソンによるアフォーダンス理論を紹介した本。これも山本貴光らの「心脳問題」で知った。100ページほどの小冊子であるが、内容は濃い。 アフォーダンス理論は1960年代にギブソンによって完成…
[中公新書 1996年10月25日初版] 下條氏の本を読むのは三冊目。実に興味深い本。もう10年位前に出た本であるのに全然知らなかった。そういう本がたくさんあるのだろうなと思う。 著者は、現代生物科学のセントラル・ドグマは「DNA→RAN→タンパ…
[勁草書房 1997年8月30日初版] 山本貴光らの「心脳問題」に紹介されているのをみて、読んでみようと思った。 平易な言葉で書かれているが、哲学の書であって内容は決して平易ではない。哲学音痴のわたくしとしては、理解できない部分が多かった。した…
[新潮選書 2005年1月15日初版] 池澤夏樹が2003年9月に京都大学文学部でおこなった夏季特殊講義の講義録である。一週間、午前・午後各一コマづつの計14コマ。総論2コマ、総括1コマ。あと世界の小説を一コマづつで論じて計10編、あとは自作…
[理論社 2005年1月20日初版] 中学前後の若者を対象に仕事について語りかける本。そういうものをいまさら何で読んでいるんだということはあるが。 玄田氏は「仕事のなかの曖昧な不安」において、いわゆるフリーター問題をとりあげ、この問題が若者の就…
[朝日出版社 2004年6月9日初版] 去年買って読まずに抛ってあったのだが、最近脳関係の本を読んでいるので、思い出して読んでみた。問題状況を整理把握するのに大変有意義な本であった。 著者らは、哲学・脳科学の専門家ではなく、他の仕事をしながらア…
[岩波書店 2002年6月27日 初版] ペンギン評伝双書の一冊。特に変わったことが述べられているわけではない。過度に偶像崇拝的になることもなく、作曲家としては天才、人間としては普通の人間であったモツアルトの生涯について論じていく。強いていえば…
[大和書房 2004年9月15日初版] まあ、恋愛について論じた本です(笑)。で、恋愛というのは「細胞と細胞が呼び合うような、遺伝子と遺伝子が似ているような−−そんな感覚だけを頼りにして男と女がむすばれ合う」ものなんだそうです。なにしろ、それは…
[柏書房 2004年10月12日初版] 内田樹とその小学校以来の友人であり、ヴェンチャー企業?の社長である平川氏の往復書簡(インターネット上での公開されたやりとり?)をおさめたもの。平川氏がそういう人間であるので、現代日本で働くことについてが…
[筑摩書房 2004年11月15日初版] 著者は主としてロボット工学の分野の研究者のようで、触覚とはどのようなもので、つるつるした感じとざらざらした感じをどうやって見分けることができるかといったようなことを研究してきた人らしい。それがあるとき…
「講談社現代選書 1999年2月20日初版] 著者の「視覚の冒険」が面白かったので読んでみた。以下、議論をたどっていく。 生物は、秩序や因果を発見しようとする認知傾向をもつ。それを見落とすことが生存にとって致命的であるような環境で生きてきたか…
[ちくま学芸文庫 2005年1月10日初版] 本屋で偶然みつけた本であるが、実に奇妙な本である。渡辺氏は現役の精神科医であるようなのだが、氏がどのような日常臨床をやっているのか見当もつかない。わたくしには著者は誇大妄想のパラノイアであるとしか…
[みすず書房 1992年12月24日初版] 本書は、不信仰者であったフロイトが、宗教に対して示した態度につき論じたものである。 フロイトは、社会の上層階級に科学的なものの考えた方が強まったことにより、宗教の影響力が次第に弱まってきたと考えた。わ…
[岩波書店 2004年11月26日初版] 毎日新聞の書評で紹介されていたもの。吉田健一が「ヨオロツパの世紀末」で18世紀の優雅と対照させて徹底的に卑俗なものとして描いたヨーロッパ19世紀のブルジョアについて論じた浩瀚な本である。 そのブルジョア…
[日本評論社 2004年10月20日初版] [新潮社 2004年12月15日初版] どちらも似たような主張をしている本である。いわく、不平等な社会は健康に悪い。ウイルキンソンの本は「進化論の現在」というシリーズの一冊なのであるが、どこが進化論と関…
[新潮文庫2004年12月1日初版 単行本2001年6月初版] 共著になっているけれど、糸井重里が、こういう点については吉本さんはどう考えますかと質問し、それに吉本が答えたものに、糸井が簡単なコメントをよせるという形式であるから、もっぱら吉本…
「新潮文庫 1954年初版 原著1940年初版] 今、この本を読み返してみようと思ったのは、内田樹の「ためらいの倫理学」でのカミュ論で「異邦人」が論じられているのを読み、そこに書かれていることが、昔読んだ時の印象とあまりにかけ離れていたのでび…